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ナレッジメール便【経営のヒント 416】

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◆ 経営のヒント~ドラッカーのナレッジ ◆    ◆◆◆
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◆◆◆                  ◆  ◆   ◆    第416号

今日も『傍観者の時代』の第14章「プロの経営者、アルフレッド・スローン」からです。
この章はしばらく続きます。

<ドラッカーの一言>
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
GMのマネジメントや構造はできあがって
四分の一世紀経っています。
見直す必要があります。
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
『マネジメント<下>』p.304 1973年 ダイヤモンド社

「ポール・ギャレットと申します。GMで広報を担当しています」。
前回書いたように奇跡のような電話をもらったドラッカー教授はさっそくGMに赴きます。
当時のGMは30万人を擁する世界的な巨大企業でした。

面談の相手は副社長のドナルドソン・ブラウン。
彼はこう告げました。
「『産業人の未来』を拝読しました。私たちは、企業のガバナンス、組織構造、
社会での位置付けなど、あの本でお書きになっているようなことに現場で取り組んできました」。

「しかし、GMでも特に私たちの年代の者は、はっきりとではありませんが、何か先端的なことに
取り組んでいるという意識はずっともっていました。でも、私たちはそろそろ引退です」。

「(CEOの)アルフレッド・スローンも、退職すべき年はとうに過ぎています。
戦争が終われば引退するでしょう。私はスローンよりもはるかに若いですが、
一緒に引退するつもりです。でも私たちの次の世代は、
いままで私たちがやってきたことを当たり前のことと思っています」。

そうして今日の一言。「GMのマネジメントや構造はできあがって四分の一世紀経っています。
見直す必要があります」。
こうして一年半に及ぶ調査が始まりました。

調査の結果は、1946年に『企業とは何か』として出版されました。
しかし、この本は完全に無視されました。
あたかもこの世の中になかったかのように。

調査後、ドラッカー教授はGMの経営陣に一つの助言をします。
「マネジメントというものは、二〇年もすれば時代に合わなくなりうるものであって、
四年間に及ぶ戦時生産から平時生産への復帰は、あらゆる経営政策を新たに見直す
絶好の機会なる」と。
当初のドナルドソン・ブラウンの言葉をおうむ返しにしたような言葉です。

しかしGMの経営陣は、「二〇年かけて練り上げ、手直ししてきた。考えうる最高のものである。
何ならば重力の法則を書き換えるよう提案されてはいかがか」など助言に異を唱え、
やはり無視します。

その後もGMはトップの座を維持し続けますが、1950年代終わりには、
経営陣は組織構造を再検討しなければならないことを知りつつも
手をつけないでいました。
特にヨーロッパでの出遅れは明らかでした。
こうしてGMは見直しの機会を見逃しました。

やがて苦境の時を迎え、1970年代になると経営政策の変更を余儀なくされました。
2009年に100周年を迎えた直後のGMの経営破綻は、
ある意味この時から運命づけられていたのかもしれません。
大きな成功が大きな失敗を呼び込んだのです。

最後にこの問いを記して終わります。
あなたが長く続けている活動で変えるべきものは何ですか?
やめるべき活動は何ですか?

佐藤 等

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