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ナレッジメール便【経営のヒント 557】

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◆◆◆                         ◆   ◆         ◆    第557号
今回も利益に関する原理です。
今日原理は、マネジメントの基本的な行動原理ともいうべきものです。
企業行動は、利益の最大化ではなく、損失の回避である
<マネジメントの原理18>

この原理があるのはなぜか?
理由は一つです。
企業に社会的な役割がある限り存続し続けることが社会的責任で
あるからです。
そのためには利益とその蓄積が不可欠です。
<マネジメント原理14>「利益は、未来のリスクと不確実性を
カバーする」は、その目的を示しています。

利益とその蓄積(剰余金、内部留保)が無くなると、企業は事業を
継続することができなくなります。
自明のことです。
利益の蓄積という観点から考えれば、利益の最大化が行動原理として
正しいように思われます。
しかしこれを行動の原理としておくことで様々な歪が組織に生じます。
利益を優先して不正プログラムを搭載した車を販売し続けるとか、
損失を先送りして不正会計を繰り返し虎の子の半導体事業を
手放などの反社会的行為になって表れることがあります。

「利益の最大化」という考え方は、古い経済学における一つの
仮説(利潤動機)でそれが正しい行動原理であるということが
証明されたことは一度もありません。
しかし利益動機は、その後、独り歩きし、神格化され、都市伝説の
ように残り、経営の現場に悪影響を与えています。
安全で排ガス規制のルールに則った車を提供することは提供する者の
前提条件であり、そのうえで利益が確保できないのであれば社会的な
役割を果たせないことになります。

企業文化に浸透させなければならないのは、「損失の回避」という
思考と行動原理です。
これは「利益の最大化」よりも厳しい原理です。
利益は絶対確保という基準です。
その条件の下でミッションを果たすという固い決意です。

できるだけ多くという姿勢と最低これだけは死守するという姿勢とでは、
間違いなく行動が異なります。
それはものの考え方一つですが、いざという局面で決定的に行動が
ちがってきます。
たとえば目の前にある利益獲得の機会に社の命運をかけてすべてを
つぎ込むことにGOサインを出してしまうことがあるかもしれません。
しかし、「利益最大化」という思考では組織の存続を危うくする
レベルの負えないリスクと利益の最大化を天秤にかけて、後者を
選ぶことになります。
間違った判断です。

「最低限を目指す志向」からは、存亡のリスクをとることはないでしょう。
日々の利益を着実に、積み重ね、その結果としてより大きな機会に
チャレンジする。 これがあるべき姿です。
日本は世界一の企業長寿国です。
背景に「損失回避」「必要な利益」という発想があったからこそ
生まれた現実なのです。

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