ホームコラム≪旭山動物園のイノベーション≫

コラム

COLUMN

コラム

≪旭山動物園のイノベーション≫

 先週、ずいぶんと有名になった旭山動物園の小菅園長の講演を2時間お聴きする幸運に恵まれました。「私の話は、経営者には役に立ちませんから」で始まった講演、いい講演でしたので皆さんにもお裾分けしたいと思います。

 1994年にゴリラがエキノコックス症に感染、そして休園。その翌年に小菅さんは、園長に就任しています。1996年には、年間の入園者数が最低の26万人となってしまいました。まさにどん底からの出発。その後ジェットコースターなど遊具の導入を図り上向きかけるが、東京ディズニーランドに象徴されるように、世の中は多様なアミューズメント時代に突入、競合施設も増え長期伸び悩み。1999年に冬期営業を開始、2001年には、オランウータンの空中運動場が完成、2002年にはほっきょくぐま館が完成、以降入園者は増加傾向をたどる。昨年8月には、上野動物園の月間入園者数を上回り、日本一に輝く。

 今となっては有名な話ですが、エキノコックス症で休園となった時期に飼育員が描いた14枚のスケッチがあります。「理想の動物園」とよばれるこの絵が、強烈なビジョンとなって今の成功があります。あざらし館やぺんぎん館も「理想の動物園」を形にしたものです。コンセプトは、「動物がいかに楽しく暮らせるか」です。

 小菅さんは、ほぼ無休で年間を通じて働いているそうです。奥様には、「息抜きにいっているのでは?」と言われるくらい、動物が好きでたまらないそうです。どん底にあるとき考えたそうです。私は「好きでたまらない」、お客様は「つまらない」と言う。このギャップは何だろう?答えの模索が始まります。分析結果は、

①たまにしかこない(年1回)
②他にもいくところがある
③何を見ていいかわからない
④決まったところしか見ていない

などです。

 例えば、フラミンゴの平均観察時間は、計測した結果3.2秒だったそうです。そうです「見えていても観ていない」という現実があったのです。ペンギンをどう見せるか、ニホンザルは?と解決への模索が続きます。

 これらの解決を図っていくなかで、「飼育係」という考え方から「展示係」へと考えが発展しました。まさにイノベーションです。「魅力ある展示」、「感動をあたえる展示」は、今世界の動物園から引き合いがひっきりなしです。私は「好きでたまらない」、お客様は「つまらない」と言う。このギャップの解消こそ、ニーズ発想の原点です。

このコラムでは書ききれませんでしたがマーケティング発想、イノベーション発想にあふれたセミナーでした。そうして聴いている経営者の目がみな輝いていました。

ナレッジアドバイザー 佐藤 等

関連記事