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ナレッジメール便【経営のヒント 423】

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◆ 経営のヒント~ドラッカーのナレッジ ◆    ◆◆◆
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◆◆◆                  ◆  ◆   ◆    第423号

今日も『傍観者の時代』の第14章「プロの経営者、アルフレッド・スローン」です。
10回目ですね。
まだまだ続きます。

<ドラッカーの一言>
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
神様お赦しください。私は、彼女たちを
救うことができませんでした。
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
『傍観者の時代』p.323 1979年 ダイヤモンド社

ニコラス・ドレイスタッド物語の続きです。
脇役にして3回記述させられるのは、彼の人間性の深さによるものです。

◆エピソード4

戦時生産下のGMに爆撃機用の照準器という
エレクトロニクスを使った難しい仕事が舞い込んできました。
高度の熟練工が必要でした。
しかし当時のデトロイトには、熟練労働者ばかりか、労働者その者もいませんでした。
そうして怯むことなく彼はこう言ったのです。

「誰かがやらなければならない。キャデラックができなくて誰ができるか」と。

そんな難題を解決するため彼が採った奇策はこうです。

「峠を過ぎた黒人の売春婦を集めろ」
「おかみも雇え、彼女たちの扱いを知っているから」

字さえ読めない彼女たちに自らの組み立ての様子を写真に撮り、訓練を行いました。
そして数週間後には熟練工並みの実績をあげることができたのです。

街中はおろか社内からも非難を受けるドレイスタッド。
しかし彼はこう言い放ち苦情を抑え込んだのです。

「彼女たちは仕事仲間だ。仕事はできるし仕事を誇りにしている。
過去はどうであれ、われわれみんなと同じに、尊敬に値する人たちだ」

ドレイスタッドは、終戦をむかえれば正規工が復員してきて、
彼女たちをレイオフしなければならないことを覚悟していました。
それでも彼女たちの職場を守ろうとしました。

「生まれて初めて、まともな賃金をもらい、まともな仕事をし、
いっぱしの権利ももてたのだ。初めて誇りももてたのだ。
彼女たちを救ってやるのが、私たちの義務じゃないのか」

そして、その時は確実にやってきました。
彼女たちの中には自殺を試みる者もいました。
中には命を落とす者もいました。

「神様お赦しください。私は、彼女たちを救うことができませんでした」。
部屋にこもって彼は泣いたといいます。

「ドレイスタッドの素晴らしさは、人についての考え方にあった」
と異例ともいうべき個人の人間性を物語るドラッカー教授の記述は、
教授自身の信条でもありました。
仕事が社会における位置と役割を決めます。
そのために雇用の維持・拡大は経営者の社会的責任の最大のものなのです。

佐藤 等

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