ドラッカー「リーダーシップ」の意味を徹底解剖。才能は必要ない!初めて部下を持つ人でもリーダーシップを発揮できる極意を解説します
公開日 : 2022.03.15 / 更新日 : 2026.03.10
「経営者としてリーダーシップを発揮するにはどうすればいいのか」
「部下に信頼される上司になるにはどうすればいいのか」
「いま自分に必要な資質は何なのか」
このような悩みを抱えている人は多いはずです。
リーダーシップは、一般的にはよく「人を導く資質」という観点で語られますが、それを実践する方法については、あまり具体的に解説されていないように思えます。
あなたも、リーダーシップを身につけたくて調べてみたものの、解説記事を読んで「それができたら苦労はしない」とガッカリしたことはないでしょうか。
リーダーシップは実践できなければ意味がありません。
そこで本記事では、「マネジメントの父」と称されるピーター・F・ドラッカーのリーダーシップ論を解説しながら、誰でもリーダーシップを発揮する方法の極意を紹介していきます。
この記事を読めば、ビジネス小説や映画に登場するような“カリスマ性”が、実はリーダーシップには何の意味もないどころか、組織に害すら与えてしまうことに気が付くでしょう。
そして、「組織のマネジメントにはリーダーシップが不可欠」であることを理解し、明日から行動に移せるようになります。
リーダーシップを発揮して組織や部下を動かしていきたいという方は、ぜひ読んでください。
組織のリーダーを選ぶには何を見なければならないか。
第一に、何をしてきたか、何が強みかを見る。成果をあげるのは強みによってである。したがって、その強みを活かして何をしてきたかを見る。
第二に、組織がおかれている状況を見て、行うべき重要なことは何かを考える。そして、そのニーズに強みを組み合わせる。
第三に、真摯さを見る。リーダー、とくに強力なリーダーとは模範となるべき者である。組織内の人たち、とくに若い人たちが真似をする。
ずっと前のことだが、私は、世界的な規模の大組織のトップをつとめるある賢人から大事なことを教わった。彼は70代後半だったが、人事の適切さで有名だった。何を見るにかを聞いたところ、「重要なことは、わが子をその人の下で働かせたいと思うかである。その人が成功すれば、若い人が見習う。だから、私はわが子をその人のようになってほしいかを考える」と答えた。これが人事についての究極の判断基準である。
『非営利の組織の経営』より
リーダーシップとは?一般論とドラッカーの考え方を比較

以下では、一般的なリーダーシップ論とドラッカーのリーダーシップ論とを比較しながら、ドラッカーの独自性を浮き彫りにしていきます。
| リーダーシップ論の比較 | ||
| 一般論 | ドラッカー | |
| リーダーシップとは? | 部下を惹きつける上司の「資質」 | ミッション(使命)を全うする「仕事」 |
| リーダーシップ論の焦点 | 個人 | 組織のミッション |
一般的なリーダーシップの定義は「個人」が焦点
ビジネス書から経営学理論まで、細かくみると「リーダーシップ」の定義は多岐にわたります。それらを総括してまとめてみると、だいたい以下のようになります。
- 目標実現のビジョンを示すことができる
- スタッフを励ましてモチベーションを維持する
- メンバーが主体性を発揮できるよう働きかける
- 発想力に富んでいる
- 決断力がある
- 行動力がある
- 部下から信頼されている
以上みたように、一般的なリーダーシップ論では、基本的には「個人」そのものにフォーカスが向けられています。「上司としてどのような人物であることが理想か」という視点で語られることがほとんです。
ドラッカーのリーダーシップの定義は「ミッション」が焦点
一方のドラッカーは「個人」ではなく、「ミッション」にこそリーダーシップの本質があると考えました。
先立つものが組織の「ミッション」(使命)であり、それをトランペットのようにスタッフに知らしめていくことがリーダーの役目なのです。
ではミッションとは何か。ミッションとは、“なぜ事業を行うのか”という組織の存在理由のことです。
| ミッションとは |
| 使命、任務。「何のために事業を行うのか」という企業の存在理由に関わるもの。“誰に貢献するのか”、“どんなことで社会の役に立ちたいのか”という「組織の外側」に視点が向けられている。 |
リーダーとはあくまでも、ミッションを行動で示し、ミッションにもとづいて正しい意思決定を下す「仕事」なのです――ドラッカーはそう考えました。
ドラッカーはリーダーシップをこう考える!
- リーダーシップにカリスマは必要ない
- カリスマはリーダーを破滅させる
- リーダーシップに“スタイル”はいらない
- 育てるのではなく、自己成長できる機会を与えるのがリーダーシップ
- メンバーの自主性に必要なのはリーダーではなく「ミッション」である
- リーダーに必要なのは発想ではなく一貫性である
- リーダーシップはメンバー全員が発揮するべきものである
ドラッカーによるリーダーシップの定義
以下に、ドラッカーがどのようにリーダーシップを定義したのかを整理しました。
- リーダーシップとは、「行動」が本質である
- リーダーシップとは、組織の使命に矛盾しないように判断を下す「仕事」である
- リーダーシップとは、地位や特権ではなく「責任」である
- リーダーシップとは、一貫性のある言動で模範を示す「信頼」である
リーダーシップが組織にもたらす効果とは?

それではなぜ、組織にはリーダーシップが必要なのでしょうか。ドラッカーの金言を参考にしながら、あらためてリーダーシップの意義について考えてみましょう。
①スタッフの自主性が育まれる
組織の使命(ミッション)を行動・言動で示し、部下に影響を与えます。リーダーはまさに「トランペット」のようなものだとドラッカーは言いました。
ミッションとは、組織の存在理由そのものです。ミッションは、スタッフの視座を高くします。“顧客に貢献するためにはどうすればいいのか”という自主性が自然と生まれます。
②スタッフの貢献意識が高まる
貢献意識はスタッフの可能性を押し広げます。貢献意識が豊かなアイデアや提案をもたらします。
ですが、貢献意識を「カネ」で生み出すことはできません。カネでしか動けない人間は言われたことしかできません。それどころか、自己保身や不正に走らせてしまいます。
貢献意識はミッションから生まれます。ミッションを共有するのは、リーダーの仕事であり、責任です。
③妥協する場面でも一貫性のある意思決定ができる
組織の運営は意思決定の連続です。日々刻々と変わっていく現実を目の前に、リーダーは意思決定を迫られます。
最高の成果を目指すべきではありますが、ときには妥協を余儀なくされることもあるでしょう。しかしそんなときにこそ、大きな落とし穴があります。目先の問題に囚われるあまり、間違った妥協をしてしまう恐れがあります。
妥協を迫られる状況でも正しい意思決定ができること。それがリーダーシップの条件の一つです。そのためには、やはり組織のミッションを正しく理解していなければなりません。
「リーダーは、妥協を受け入れる前に、何が正しく、望ましいかを考え抜く。(中略)その妥協が使命と目標に沿っているか離れているかによって、リーダーであるか否かが決まる」
(ドラッカー『プロフェッショナルの条件』)
リーダーシップを身につける10訓

ドラッカーは「真のリーダー」と「似非リーダー」とを区別しています。以下に、ドラッカーが論じたリーダーシップ論を10訓として整理しました。ぜひ参考にしてください。
- 真のリーダーは、言動に一貫性がある
- 真のリーダーは、組織の使命に矛盾がないように意思決定をする
- 真のリーダーは、責任は常に自分にあると理解している
- 真のリーダーは、部下を恐れない
- 真のリーダーは、優秀な部下を自らの誇りとする
- 真のリーダーは、自分が去った後に組織が崩壊することを恥とする
- 似非リーダーは、自らのカリスマ性で破滅する
- 似非リーダーは、柔軟性がなく、変化を恐れる
- 似非リーダーは、地位や特権を守るために部下を恐れる
- 似非リーダーは、自分が組織の支配者であると錯覚する
おわりに:一人ひとりがリーダーシップを高めるために
| 一般的なリーダーシップ論の特徴 | 「個人」が焦点 |
| ドラッカーのリーダーシップ論の特徴 | 「ミッション」が焦点 |
| ドラッカーのリーダーシップ論の定義 | ・リーダーシップとは、「行動」が本質である ・リーダーシップとは、組織の使命に矛盾しないように判断を下す「仕事」である ・リーダーシップとは、地位や特権ではなく「責任」である ・リーダーシップとは、一貫性のある言動で模範を示す「信頼」である |
| リーダシップが組織にもたらす効果 | ・スタッフの自主性が育まれる ・スタッフの貢献意識が高まる ・妥協する場面でも一貫性のある意思決定ができる |
「真のリーダーは、他の誰でもなく、自らが最終的に責任を負うべきことを知っているがゆえに、部下を恐れない。ところが、似非リーダーは部下を恐れる。部下の追放に走る。優れたリーダーは、強力な部下を求める。部下を激励し、前進させ、誇りとする。部下の失敗に最終的な責任をもつがゆえに、部下の成功を脅威とせず、むしろ自らの成功と捉える」
(ドラッカー『プロフェッショナルの条件』)
「リーダーシップを発揮するには?」
この問いに対する核心的な答えは、「組織のミッションを行動で示す」です。リーダーに必要なのは、才能やカリスマではありません。ただひたむきに、組織のミッションに誠実であることが、リーダーシップの本質です。
今回紹介したピーター・F・ドラッカーは、現在でも多くの実業家に読み継がれるビジネスマンのバイブルです。当記事ではいくつかドラッカーの言葉を引用しましたが、少しでも琴線に触れるものがあれば、ぜひ一度、ドラッカーの著作を手に取ってみてください。