最高の専門性を備えつつ、「教会を建てている」といえる人財【経営のヒント 800】
専門化への努力に危険が潜む、組織全体としての成果への関心を逸らす。
『経営の真髄』<下>p.40
ドラッカーは、「それどころか組織には、人を間違った方向へ持っていく大きな要因4つある」としその筆頭に「専門化」を挙げました。
この節には有名は3人の石工の話が出てきます。
石工は「何をしているのか」と聞かれます。
一人目:「暮らしを立てている」
二人目:「最高の仕事をしている」
三人目:「教会を建てている」
一人目の石工はマネジメントの人間ではないし、そして将来もマネジメントの人間にはならないでしょう。
問題は二人目の石工です。これが「専門化」という人を間違った方向へ導く要因です。問題の本質は、本人が重大なことをしていると思い込んでいることです。もちろん最高の専門性を磨くことを当然としなければなりません。しかしそれは、全体のニーズとの関係においてでなければならないということです。
組織のマネジメントや専門家の多くも実は、第二の石工のように自らの専門を重視します。不可欠の人財になるには、事業全体をマネジメントし、全体の成果に責任をもつ人間の数を増やすことです。
それは全体のマネジメントに関わる人を増やすことを意味しません。全体の成果に責任をもつ各分野の専門家がそれぞれの部門にいる状態を作ることです。最高の専門性を備えつつ、「教会を建てている」といえる人財を育成することが求められます。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)