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≪利益とは何か≫

 桜前線も瞬く間に去り、GWが終わると3月決算の申告ラッシュがやってきます。私たちの会計事務所が一番忙しい季節となります。

 決算といえば、「今年の利益はどれくらいか」が最大の関心事。通称ボトムラインともいわれ、加減算を繰り返し、最後の行に「(税引後)当期純利益」が表示されます。

 今年のGWは、論文制作に取り組んでいました。テーマは「利益の発見」という主旨のものです。「利益」とは何か、「利益」という概念はいつ誕生したのかなど調べてみました。

 先ず千ページを超える『会計学辞典』で「利益」の意味を調べてみました。どうやれば利益を計算で求めることができるかは答えられても、意味、定義を問われると意外に困るものです。
 
 「会計において、利益はある期間における企業資本の増加分である」とあります。簡潔です。このことから利益は「企業資本の一部」を形成していることが解ります。そして「ある期間」と書いてあります。そう1年とは限らないという意味です。

 さて次は、「利益」の歴史です。「会計史」という超マイナーな研究分野があります。私も関連著書を少しずつ集めています。これらを紐解くと中世イタリアに簿記の仕組みをまとめ印刷した御仁がいることがわかります。ルカ・パチョーリ修道士です。「スムマ」(算術・幾何・比及び比例全書)という六百ページを超える著書の一部に簿記の章があります。そこに「資本」や「利益」といった言葉が出てきます。私たちがお世話になっている簿記の原型です。 しかしパチョーリさんは、発明者ではなく、すでに在った実務を最初に本にして人々への普及を図った人です。一四九四年、コロンブスがアメリカ大陸を発見した頃の出来事です。

 会計は、航海、交易ととても関係がありました。地中海貿易が盛んであったイタリアで簿記が発達したのも道理です。1航海1会計が当時のスタイルでした。銀や香辛料などの交易を行い、航海が終われば清算です。最初の元手(資本)がどれだけ増えたのかを計算します。差額を利益と呼びました。「利益はある期間における企業資本の増加分である」という定義は、中世のイタリアでも通用します。

 増えた資本は配分され、次の航海を待ちます。しかし難破したり、海賊に会ったりのリスクも当然負わなければなりません。リスクを分散するために人々は、あちこちの航海に分散して投資するようになります。リスクを分散して利益をあげようと考えたわけです。原始的な企業体の誕生です。

 利益はリスクと関係していることがわかります。私たちのビジネスもリスクの塊です。それに見合う利益をあげなければならないという意味で基本は今も昔も変わっていません。改善やイノベーションが必要なのは、陳腐化リスクから逃れるためです。「日々新たなり」の精神で常に商品や活動の見直しをしていきたいものです。「利益発見」物語は次号に続きます。

ナレッジアドバイザー 佐藤 等

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