人々が成果をあげられるようにすること【経営のヒント 666】
マネジメントの役割自体は変わっていない。それは、共通の目的、共通の価値観、適切な組織、訓練と自己啓発によって、人々がともに成果をあげられるようにすることである。
『経営の真髄』<上>p.44
マネジメントの役割は、組織がミッションを果たすために、顧客に適切な製品やサービスを提供することです。そしてもう一つ。それは人々が成果をあげられるようにすることです。
そのためには、共通の目的(ミッション)は欠かせません。これがないと何のために働くのかが不明確になり、単にお金を稼ぐために働くことになります。働く人は、誰かの役に立ちたいと思っているのです。それを明示するがミッションです。
組織の目的も価値観も組織を方向づける道具です。その意味で「共通の」という言葉がつきます。「共通の」とは、組織に属する人々が同じものを共有し、同じ方向へと導くことです。適切な組織の「適切」とは、組織の方向づけあったという意味です。
このように方向づけられた組織で働く人々は、その方向づけの中で自分たちが行うべきことを考えることができます。行うべきことは何か。それを行うには何が必要か。
このような問いを発することができれば、何を訓練し、どのように自己啓発を行うかを考えることにつながります。つまり何をテーマに、どうやって行うかが決まります。これを人材育成といいます。
自己啓発という言葉が出てきましたが、ポイントは「自己」にあります。企業が人材を育成することはできません。自己啓発、つまり自ら学ぶことが基本になります。企業は、その環境を整えるだけです。
現代社会では、組織で働く人たちが急速に知識労働者になっています。知識労働者とは、自ら考え、自ら決定し、自ら行動することです。「自ら」がポイントです。一人ひとりが自らをマネジメントする時代が到来しています。
人々が成果をあげられるようにすることは、成果(外の世界における変化)をあげる存在に自分でなることを意味します。「自ら」が21世紀では、益々重要になっていることを意識して仕事に取り組みたいものです。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)