いま行っていなかったとして、いま始めるべきものか【経営のヒント 752】
「あらゆる政策、プログラム、活動について、『ミッションは何か』『いまも妥当なミッションか』『いまも価値あることか』『いま行っていなかったとして、いま始めるべきものか』を考えなければならない。」
『経営の真髄』<上>p.298
この章は「政府機関の再生」というタイトルです。政府機関の特性として継続性と説明責任が求められます。一度、始めたものはなかなかブレーキをかけられないのです。
とはいえ、予算には限りがあります。収入不足を借金(国債や地方債)で賄おうとするのは不健全です。それゆえ継続圧力に抗しながら、廃棄する仕組みを持っていなければなりません。
法令などの適用期間を決めてスタートするのをサンセット条項といいますが、法令のみならず、あらゆる活動に適用可能な考え方です。何に優先的に資金や人を配分するのか。行政という多様な人々を対象にサービスを提供する場合、難しい決断を迫られまる場面も多いと思いますが、財政の継続性を確保するには優先順位付けは欠かせません。
このような考え方は、一般の企業でも同様です。たとえば、ドラッカー教授は「独善製品」というコンセプトを提示しました。社長の思いだけで続いている長く日の目を見ない製品のことです。「いま行っていなかったとして、いま始めるべきものか」は、どんな組織体でも適用可能な魔法の問いです。一度試してみてはいかがでしょうか。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)