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新しい現実【経営のヒント 518】

朝鮮をめぐる緊張が続いています。
東シナ海および日本海両海域に米国原子力空母2隻が浮かぶのは史上初めてのことです。

<ドラッカーの一言>

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もっとも重要かつもっとも基本的なことは、
国防と軍事力の機能の再点検である。
もはや国防は不可能であり、可能なのは報復だけである。
軍事力も、もはや政治の有効な手段ではない。

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『新しい現実』p.60

ドラッカー教授は、1945年以来大国間では戦争がないということを史上最長のことであると記しました。
そして、それは今でも続いています。

もちろん大国と小国の衝突はありました。
たとえばアメリカは、北朝鮮とベトナムとソ連はアフガニスタンと戦火を交えました。

その裏で米ソの二大陣営に分かれた冷戦構造は、軍拡競争へと進みました。
ドラッカー教授は「今や、軍事力は政治の従僕ではなく、政治の主人となった」。
「しかも、その軍事力がまったく不経済な存在となっている。経済発展の阻害要因になっている」。
当時の現実をこのように描写しました。

これが遠因となり、ソ連は崩壊しました。
またアメリカの経済的主導権はベトナム戦争によって後退したと教授は考えていました。

米国新政権はこれまでの国防費削減の動きから反転、国防費を増額させる方針です。
ドラッカー教授は現代では政治の有効な手段でないばかりか、
「軍事力は軍事的にさえ無能であることが明らかになっている」としました。

大国と小国が戦っても大国が破れるかせいぜい引き分けであることを指摘しました。
「軍事力は、個々の戦闘では勝てても、戦争そのものの行方を左右することはできなくなった」と
根本的な原因を述べました。

軍事が軍事的な能力を喪失したというのです。

さらに「核兵器、化学兵器、細菌兵器の時代では、自国を守ることもできない」と国防という考え方が崩壊している事実を突きつけました。
「鉾と盾」の盾が効かない時代になったのです。しかも鉾は盾をもつための何十分の一の軍事費で可能なのです。
北朝鮮の存在はそれを証明しています。

軍事力が政治的な問題解決手段として無能力化している中で、今回北朝鮮にアメリカはどのように臨むのでしょうか。
北朝鮮の中距離弾道ミサイルの射程がグアム島に到達する5000kmを超え、
アメリカ本土が射程圏内に入る大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成も時間の問題といわれる中で
国防(盾)のために世界最高の鉾を先制攻撃という形で使うのかどうか。それは有効な手段なのか。

ドラッカー教授は『新しい現実』(1989)第5章「軍事力の不経済」を次の言葉で締めくくりました。

「再び意味ある存在となるためには、軍は何でならなければならないのか、
また、いかに行動しなければならないのか」。

今回その答えが出るのでしょうか。世界が動向に注目しています。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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