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人は金銭や褒めるといった外発的な要因だけでは真に動機づけられることはない【経営のヒント 578】

連続して人のマネジメントにおける人がもつ5つの側面に焦点を当てたメルマガをお伝えして
います。
5つの側面を示した原理の復習からです。

人のマネジメント上考慮すべき側面は5つある―
1.生理的な側面、2.心理的な側面、3.社会的な側面、4.経済的な側面、5.政治的な側面である。
<マネジメントの原理45>

今日は4.の社会的な側面についてです。

前々回、2.の心理的な側面について述べました。
その際、ドラッカー教授は、働くことは人格の延長であるとし、仕事をとおして自己実現に
努めるという側面があることを説明しました。
その際、「人はお金だけを目的に働くものではありません」と指摘しました。
「お金だけ」と記したのは、お金は生計の資になるからです。
つまり生きていく上では必要不可欠のものです。
しかしお金を得ることは、生きるための手段にすぎません。
つまり。お金を得ることが働く目的ではないということです。
しかし生きるための手段ですから目標を持って働くことは可能です。
目的と目標の違いを混同しないことは大切です。
働く目的は2.の心理的な側面と関連しています。
たとえば、働くことが生きがいになれば、仕事をとおして自己実現する機会が増えてくる
でしょう。
また自己成長を実感することと直結しています。
自らの成長は働く目的の有力な候補です。

人の生きがいや働きがいは、モチベーションや動機づけの問題にも通じています。
動機づけの基本は、内発的な動機づけです。金銭報酬など外発的な動機づけ要因では、
真の働きがいには結びつかないことが明らかになっています。

もちろん金銭をはじめとした報酬が少なければ、モチベーションが減退します。
しかし、標準的な水準以上にこれらを増やしても継続的なモチベーションのアップには
つながらないのです。

働くことは、もう一つ経済的な側面を有しています。
すなわち組織で人が働くことで世の中に製品やサービスを供給できるということです。
一人ひとりの生計の資は、そこで生み出される付加価値から人件費として支払われます。
企業の利益も付加価値から生み出されます。
そして当の付加価値は顧客の満足からもたらされます。
人が働くことによる経済的な側面は、組織における仕事をとおして社会とつながって
いるのです。
今日の原理をまとめておきます。

人は金銭や褒めるといった外発的な要因だけでは真に動機づけられることはない
<マネジメントの原理54>

生計の資は働くことによってもたらさせる
<マネジメントの原理55>

生計の資は、人件費として組織の付加価値からもたらされる
<マネジメントの原理56>

組織の利益は付加価値からもたらされる
<マネジメントの原理57>

組織の付加価値は顧客によってもたらされる
<マネジメントの原理58>

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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