目標は常に上に向かって、責任は下に向かって【経営のヒント 791】
上司との関係、部下との関係のいずれもが双方向である必要がある。
『経営の真髄』<下>p.23
そのマネジャーにも上司がいて、もちろん部下もいる。このことを前提に考えます。第一に、マネジャーは、上司が率いる部局の目標達成に貢献する必要があります。第二に、そのためにマネジャー自身と彼が率いる部局は、いかなる貢献をすべきかを考え抜く必要があります。双方向の意味です。
加えてドラッカーは、「それらの関係のすべてが、権限および情報の双方についてフォーマルかつインフォーマルでなければならない」といいます。権限は責任と一体です。また、現代の知識組織においては、情報は共有が原則です。知識組織では、現場が情報をもっていることが多いからです。
仕事における人間関係はフォーマルですが、人間は、インフォーマルな側面も持っています。両者を明確に線引きすることは、難しいことです。
それゆえ双方向かつ相互依存の関係になければならないとドラッカーは考えます。
そのうえでマネジャーの責任は、部下たちが自分に要求されているものを知り、理解させることです。部下の目標設定とその達成を支援します。道具と人材と情報を手に入れるサポートを行います。助言し、相談に乗り、教えます。つまりマネジャーの役割は補助することです。マネジャーは補助し、助力する責任を負います。
組織の目標は、組織の客観的なニーズから生まれます。全体の目標を達成するため各部局、その成員の目標はあります。それは分割された目標ではなりません。各部局の目標の総和がその合計以上になることが組織の目標です。目標には、定量的なものの、定性的なものもあります。
目標は常に上に向かって、責任は下に向かって。これがマネジメントの原理原則です。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)