コミュニケーションは要求である【経営のヒント 837】
コミュニケーションは、受け手に全面降伏を要求する。
『経営の真髄』<下>p.117
コミュニケーションの3つ目の原理は「コミュニケーションは要求である」です。
「コミュニケーションは、それが受け手の価値観、欲求、目的に合致するとき、強い力となる。逆にそれらのものに合致しないとき、まったく受けつけられないか、抵抗される」とドラッカーはいいます。
強い力となるか、抵抗になるかは、受け手の価値観、欲求、目的次第です。強い力として利用するためには、受け手の価値観、欲求、目的を知る必要があります。
そして逆の場合には、受け手の価値観、欲求、目的を変えることを要求しなければなりません。そのようなことはめったに起こることではありません。そして人の実存に関わることゆえに、激しい抵抗が予想されます。
それでもなお「要求する」ことがコミュニケーションの本質です。受け手の価値観、欲求、目的を変えるのは至難の業ですが、そのためにも、受け手の価値観、欲求、目的及びそこから発生する「期待」を知っておく必要があります。
ドラッカーは聖書の一場面を例に出しました。
「キリストでさえ迫害者サウロを使徒パウロとするには、サウロをいったん盲目にする必要があった」
天からの強い光で3日間盲目となり、その後、目から鱗(うろこ)のようなものが落ちて視力が回復したといいます。パウロ回心の一場面です。キリスト教を世界宗教にした最大功労者パウロの霊的な開眼は、受け手の全面降伏の賜物だったのです。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)