【実践企業紹介】相模原市 小池設備さま
実践ナビゲータの 実践企業訪問記
《相模原・小池設備さまの実践事例》
強みを生かすということは、行動することである。 人すなわち、自らと他人とを敬うということである。 【経営者の条件 p.220】 |
“実ドラ”実践ナビゲータの清水です。
株式会社小池設備さまをお訪ねして参りました。
小池設備さまは、相模原にある従業員数約30名規模で水道工事(東京・神奈川エリア)をされている企業です。
社長の小池重憲氏は、昨年、実践するドラッカー講座にご参加頂きましたので、最初にそのご感想を伺いました。
(小池氏)「いやあ、最初の講座が終わった後には、すっごく・・・
その・・・・“キモチワルイ感じ”でした(笑)」
(清水)———“キモチワルイ感じ”? ・・ですか?
「以前にも、『箱セミナー(※注)』に出た時もそんな感じだったのですが、
それまでの自分の前提や常識が覆されてしまう“キモチワルイ感じ”なんです。
でも、そのセミナーに出た後、それが私にとっては、もっとも効き目があることに気づいたんです。
今回の受講したときにも、同じ感覚を感じたので、“コレは効くぞ”と思って最後まで出たんですよね。」
———なるほど、キモチワルイ、という感想は初めて頂きましたが(笑)。
★★ なにをもって憶えられたいか? ★★
———その後、ドラッカーを学んだ後、実践していることはありますか?
「お恥ずかしいのですが、ほとんど何もできていません。
・・・でも、一つやってみた事があるんです。
“なにをもって覚えられたいか?”のところでの、実践シートのワークの中で、
『いま、あなたは何と紹介されていますか?』という問いと、
『10年後は、何と紹介されたいですか?』という問いかけ。
ワークの時には、自分はうまく書けなかったのですが、
コレはいい!と思って社内の全員にその二つの質問をしてみたんです。
それが、この表です。」
———おお、凄い!
「今回は、表にする際に、上記の『いま』と『10年後』の問いに加えて、
“行動”・・つまり『10年後そうなるために自分が今年やること』についても、
社員のお互いにわかるように一覧にしました。」
———いいですねー。やってみて何か変わった事はありますか?
「変わった事・・・・今の段階では、私が一番変わったのかな・・・。
以前と違って、ほとんど怒らなくなりましたね・・。」
———怒らなくなった?
「ええ、私としては、『何々をしておかなければ将来困るぞ。』とか、
『何々をしておくと将来絶対役に立つぞ。』ということを思ってアドバイスをしたり、
ステップアップの機会を設けていたつもりだったのですが、この表を見てみると・・・
相手は別にそんなことを求めていなかった(笑)。
なのに、その通りにしない部下に苛立ったりしていました。」
———わかります。善意が空回りになるときのやるせなさ(笑)。
「そうそう、その空回りの原因が、
“相手が何をしようとしているのか”をきちんと聞いてもいないし、確かめてもいないということが
原因だったのだと思います。
これを見たら、それまでの自分が、いかにひとりよがりのおせっかいだったかがわかりますよ。」
———なるほど。私も“わかっているつもり”になっていて、きちんと確かめていない相手があります。
きちんとスタッフとの時間をとってみたくなりました。
「そうなんですよね。わかっているつもり(笑)。
だからきちんと確認することが必要だと気づきました。
その『何をしようとしているか』を確認する考えが、自分の中ではさらに広がっていって、
最近は何か失敗した部下がいても、“何をしようとしたのか”を聞くようになりました。
そうしたら、怒る必要がないし、怒る気持ちもおきなくなるんですよ。」
———怒る気持ちがおきなくなる、という表現が面白いですね。
「でも、そうなんですよね。失敗した部下がいたとしますよね。
そうしたら、最初に聞くのが“何をしようとしたのか”なんですよ。」
———なるほど、質問ですね。
「ええ、なかなか説明できない人もいるのですが、
きちんと説明できれば、それでほとんどおしまいです。
何をしようとしたのかがわかると、意外にいろいろと考えてくれていることがわかるんですよ。
そうすると、こちらも早とちりで怒る気にもなれない。
なにを意図したかを説明してもらえると、
次にやることが本人の頭の中にあるかどうかがわかります。
『もう次に打つ手が頭にある』という人には、それでおしまいです。
もし、『まだ何も頭に思い浮かんでいない』という人がいたら、
次には“何が抜けていたか”とか、“次はどうするか”を聞くだけで、
その人がやろうとしたことの助けになることができる。
だから怒る必要なんてないし、怒る気持ちもおきない。そんな感じです。」
★★私的な強みは公益となる。★★
———大変興味深いお話です。
ナレッジワーカー(知識労働者)と共に働くリーダーのあり方を考えさせられました。ありがとうございます。
最後に、今後の小池さんの展開や活動についてお聞かせください。
「講座を受講したときに、『私的な強みは公益となる』という言葉が心に残りました。
一人ひとりが持つモノを、地域や社会や業界の公益につなげるようにマネジメントしなければならない。
そう考えて、今取り組み始めたのは、
『ビジネスができる職人を育てて、独立できるように支援していく仕組みをつくること』なんです。
ご存知のように、今の時代は、職人が不足しています。
能力の修得が困難で、しかもその努力に報われる機会が少ないとなれば、
職人なんて“割に合わない”と考えるのは当然です。」
———ええ、他の業界でも同じ現象が起きているようですね。
「そうなんです。私は、職人といわれる技術者に、
技術だけでなく、営業活動や経営に関することを一緒に学んで、
独立してから困らないようにするとともに、
その独立を全面的に支援できる会社でありたいと思っているのです。
それが、この業界の未来に優れた職人を多く残していく鍵になるのではないかと考えています。
今、“同志となる企業”を募っているのですが、こんなお話をすると、
『簡単に独立されたら人がいなくなって、また募集しなきゃならなくなる・・。
おまけに、貴重な仕事の時間を削って、お金も使って、
直接の仕事以外のことを学ばせるなんて、馬鹿馬鹿しい・・・』
なんて批判も受けることもあります。
でも、これはこの業界のためだけでなく、将来の日本のためにも必要なことだと思っているんです。」
———将来の日本のため。ですか?
「ええ。水道工事の仕事は、日本中、どの地域にもあります。
手に職をつけて、営業活動や事業経営についても知識を持つことができれば、
何らかの事情で一時的に自分の故郷を離れなければならないことがあったとしても、
いずれ戻ったときに故郷で仕事ができ、生活ができる人が育つことになります。
今の過疎化が問題となっている地域や、東北の一部の地域などで、
将来そうした人々が活躍してくれたら・・・、
きっと将来の日本のためにもなると思うんです。
これは、特に若い人たちにとっては、さらに重要なことです。
ですから、
最近は、神奈川だけでなく県外や全国の学校にも行かせて頂いて、
職人になることについてのお話をさせていただいています。
その活動を少しずつですが、いま広げていっています。」
———小池社長、すばらしい活動ですね。視座が一段高くなるお話でした。
今後のさらなるご発展とご活躍を期待しております。ありがとうございました。
※『箱セミナー』:アービンジャー・インスティチュートの提供するリーダーシップ論のセミナー。私たちの仲間で、ご自身も美容室を3店舗経営しつつ、このセミナーの認定講師をされている円城寺興志さんという方がいらっしゃいます。私(清水)もこの方のセミナーに参加して、ドラッカーのリーダーシップ論と通じるものを感じ、ファンになりました。