それはすでに起こっているものではないのか【経営のヒント 723】
ほとんどの人が、すでに見てしまったものしか想像できない。
『経営の真髄』<上>p.203
このような現実にもかかわらず、人は今後10年後、30年後に起こるだろうと考えがちです。このような人間の習性を克服するために重要性な問いがあります。
「それはすでに起こっているものではないのか」
顧客や従業員などに対してそれはすでに起こっているのではないかと考えることです。たとえば、大企業の初任給が上昇しています。30万円というケースも出てきました。
中小企業のうちには関係ない…と考えてはならないということです。労働市場は、大企業用、中小企業用の区別はなく一体だからです。
コロナが収束に向かいつつある中で、コロナ前に言われていた若年労働者の不足という課題が一気に表面化していきます。業種によっては、雇用の不調を理由として店舗閉鎖、経営破綻というケースも出てくるでしょう。
人の採用と定着が経営課題として組織の大小にかかわらずいっそう重要性が増してきます。コロナ前後で日本経済は、デフレからインフレへと変わりました。これも賃金上昇圧力となって襲ってきています。基調は変わったということです。
賃金を上げていくことは「すでに起こっている」こととして、いつから賃金を上げるか検討すべきことではなく、ただちに実行すべきことになっているのです。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)