新しい現実は、これまでの常識や思考習慣の大転換のときを教えてくれる【経営のヒント 724】
すでに起こった未来を見つけ、その影響を見ることによって、新しい知覚がもたらされる。新しい現実が見える。
『経営の真髄』<上>p.204
「すでに起こった未来を見つけるという方法が有効なのは、深く染みついた考えや、仕事の仕方や習慣に疑問を投げかけ、ひっくり返すからである」とドラッカー教授はいいます。
断絶の時代にあっては、昨日の現実と今日現実は同じではく、新しい現実が生まれています。その新しい現実を見る方法が「すでに起こった未来」を見ることです。
しかし「起こりつつあると信じていること」や「起こるべきであると信じていること」を実際に起こっていることとして見てしまうリスクには注意が必要です。さらにいえば、「これこそ待っていたものだ」という時は、それはすでに起こっていることではなく、願望が表明されただけかもしれません。
これらのリスクを慎重に回避して新しい現実を知覚することが大切です。新しい現実は、これまでの常識や思考習慣の大転換のときを教えてくれるからです。
コロナ禍後の日本では激しい人手不足が起こります(すでに起こっています)。優秀な人材は引っ張りだこです。また物価高などを背景に大企業を中心に賃上げが進行中です。
中小企業も早晩、対応を求められます。日本では30年間、賃金はほぼ横ばいでした。賃金は上がらないものという深く染みついた考えが今、転換されようとしています。新しい現実を無視すれば、古い現実の中に取り残されるだけです。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)