小さく素早くスタートする【経営のヒント 766】
知識労働の生産性の向上を図るには、まずはじめに関係者全員の姿勢を変えなければならない。
『経営の真髄』<上>p.348
知識をベースに仕事をしている組織では、指示命令で組織を効果的に動かすことはできません。そもそも上司が有効な指示を出せるとは限らないからです。専門性は、仕事に向き合う現場に蓄積されるからです。それゆえ上司にできることは、方向づけを行うだけです。
さて全員の姿勢のどの部分を変えるかです。これについては基本を前回述べました。
1)テクノロジスト自身が仕事は何かを考えることである
2)テクノロジスト自身が仕事の質を担保することである
3)テクノロジスト自身が知識労働者であることを自覚することである
知識労働者であることを自覚することは、自分で考え、決定し、行動すると覚悟を決めることと同義です。
ドラッカー教授は、組織全体を急に変えるのではなく、パイロットテスト(試行)を行う必要があるといいます。
変化を受け入れる用意のある部門やチームを選び、先行テストをかなりの期間行うことをすすめています。これまでの思考習慣が変わるのには時間がかかるからです。また、予期せぬ問題や課題にぶつかるかもしれません。
こうして先行テストの結果、部門やチームが生産性を上げたのちに、さらに範囲を拡げていきます。こうして時間をかけて一人ひとりの知識労働者の姿勢を変革していきます。時間がかかります。小さく素早くスタートすることが肝要です。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)