自立性と責任を与え、継続して学ばせ、教える【経営のヒント 768】
知識労働の生産性を向上させるには、なすべきことを明らかにし、成果とその内容を明らかにし、自立性と責任を与え、継続して学ばせ、教えることである。
『経営の真髄』<上>p.352
マニュアルワーク(肉体労働)では、なすべき仕事は所与です。つまり問題は、常にいかに行うかということになります。この場合、工場や機械、事務機器などの生産手段の所有者は雇用主である組織です。
これに対してナレッジワーク(知識労働)では、問題は「何のために、何を行うか」です。具体的には「成果は何か」を問うことです。それを決めるのは知識労働を行う本人(知識労働者)となります。状況を含めて本人が最も情報と知識を有しているからです。したがって「なすべき仕事」、「何を行うか」は目的と状況を加味して本人が決めることになります。自立と責任が求められるのはこのためです。
しかも生産手段は、知識や経験そのものであり、本人が所有しています。つまり組織は、その生産手段を借りる立場にあるだけです。つまりマネジメントの方向性が異なります。
さらに生産手段を強化するためには、自ら継続学習を行い、組織はその人が他人に教える場面を用意することです。従来の人材育成とは、これまたマネジメントの方向性が異なります。
知識労働の生産性を向上させるには、従来のマニュアルワーク的な生産性と真逆の考え方が必要です。マニュアルワーク的な生産性は、100年をかけて50倍になったとドラッカー教授はいいます。おそらく知識労働の生産性は、それ以上のスピードと倍数で伸長するものと思われます。意識して取り組んだ組織と、そうでない組織の生産性は決定的となるということです。最重要課題の一つです。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)