新しい価値を世の中に提供する【経営のヒント 771】
社会に存在する諸々の問題は、社会の機能不全であり、社会を退化させる病である。しかしそれは、マネジメントにとっては挑戦である。
『経営の真髄』<上>p.360
前々回、「社会的責任の問題は、企業、病院、大学にとって、2つの領域において生ずる」ということを示しました。
第一の領域は、自らの活動が社会に対して与える影響から生じます。
第二の領域は、自らの活動とは関わりなく社会自体の問題として生じます。
冒頭の言葉は、第二の領域に関わるものです。
ドラッカー教授は、その「挑戦」を事業の上の機会に変え、新しい価値を世の中に提供することとし、イノベーションと呼びました。自社の強みや卓越性を生かして、新しい機会に人やお金をシフトさせ、一つの事業として成立させることです。
しかし、すべての社会的な問題に対してイノベーションが成功するわけではありません。第二の領域の中には、社会的な病として残存するものがあります。
果たしてこれらの問題を解決する担い手は誰かが問われます。どこまで企業は第二の領域の社会的問題の解決に踏み込むべきかを考えなければなりません。それが次回のテーマです。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)