どこで働くかは自由【経営のヒント 811】
MBOこそ、自由たるべき働く人たちの哲学たるべきものである。
『経営の真髄』<下>p.54
MBO(自己目標管理)が人を自由な存在として行動させるとドラッカーはいいます。
組織が自己目標管理の用い方を誤ると拘束衣になりかねません。不自由になるということです。元々MBOは一人ひとりの成長のための道具です。もしかしたら、スタートから誤解されているかもしれません。
組織社会では、多くの人が組織に身を置いています。もしくはフリーランスであっても組織と仕事を行っています。昔、農地が主要な生産の場でした。しかし現代の生産の場は組織です。組織の中で農奴のように不自由に働くか、逆に自由に働くか。それは一人ひとりの心構えにかかっています。
どんな組織に属し(位置)、何をもって成果に貢献するか(役割)は、自分で決めることが基本です。ここで成果とは、組織の外に起こる変化のことです。
貢献を問うことは「なすべきことは何か」を問うことです。自分がもっているものを生かして貢献できることを自分で考えることです。
自己目標設定は、「なすべきことは●●である」と貢献のスタイルで記します。貢献の姿はまちまちです。
しかし「われわれにとっての成果」、つまり組織が目指す成果の姿は一つです。何を成果として組織は方向づけられているかを知ることは重要です。この方向づけなくして貢献は決められないからです。
自由とは、選択肢の中から制約なしに選べる状態をいます。MBOの成否は、自己決定にあります。「成果をあげるためになすべきことは何か」を考えることです。自己決定は自由の一要素です。
「なすべきこと」の範囲が増え、「できること」が増えてくることを外なる成長といいます。人は組織という現代の再選の場を用いて自己を成長させることができます。そのために組織という道具を正しく使いましょう。まずは、自己を成長させるにふさわしい組織に身を置いているかを問いましょう。どこで働くかは自由なのですから。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)