専門家のためのキャリアと昇進システム【経営のヒント 815】
企業における専門家の昇進の道は、それぞれの専門分野の範囲に限定されている。
『経営の真髄』<下>p.66
ドラッカーは「情報化組織」にシフトしているがゆえのマネジメント上の新しい問題を4つあげました。
- 専門家のためのキャリアと昇進システム
- 共通のビジョンの形成
- タスクフォースのための組織構造
- トップの育成
まずは、1. 専門家のためのキャリアと昇進システムについてです。オーケストラの例をあげるとフルート奏者は、フルート奏者以外になれるともなりたいとも思わないはずです。医療現場のレントゲン技師も同様です。企業にいる専門家も問題をもっていると考えるのが妥当です。
彼らのキャリアは、第二フルート奏者から第一フルート奏者か、二流のオーケストラから一流のオーケストラに移るこのくらいです。レントゲン技師であれば、主任技師になることぐらいです。企業にいる専門家も同様です。
それ以外のキャリアは、マネジメント人材になることです。別種の専門家になるということです。この道のポストは限られており、いずれにしてもキャリアパスとしては閉塞感があります。
今に至ってもなお未解決の問題といえるでしょう。解決方法として見出された方法は、部下を持たない昇進システムの導入や昇進と連動しない昇給で報いることぐらいではないでしょうか。
いずれにしても問題が存在するということを認識していることは重要です。この認識こそが、専門家が定着する組織づくりに取り組むスタートラインです。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)