『経営の真髄』は「有機体としてのマネジメント」を学ぶために現代的にアップデートされた著作【経営のヒント 654】
重要なことは、部分の効率ではなく、成長、均衡、調整、統合の結果としての全体の成果である。
『経営の真髄』p.4
『経営の真髄』の編集を担当したジョセフ・A・マチャレロ教授は、序文で「有機体としてのマネジメント」を強調しました。すなわち「全体は部分の総和を越え、しかも部分とは異質であるがゆえに、大きなフレームワークのもとに理解を進める必要がある。(中略)マネジメントは、一つの大きな有機体として見るとき、はじめて意味ある存在として理解できるものとなる」。
冒頭の文章は、同書のベースとなっている『マネジメント』からの引用です。「有機体としてのマネジメント」の性質の一端を示しています。「成長、均衡、調整、統合」のすべてが「全体」の存在を前提としています。
また「有機体としてのマネジメント」は、「成果」を目的にしています。成果とは、製品やサービスをとおして顧客価値を提供することです。言葉を換えると成果とは、顧客に起こるプラスの変化のことです。
また「有機体としてのマネジメント」は、「体系であり実践である」といわれます。「体系」とは、いくつかの要素が相互依存的に作用し、成果を生みだす存在です。
マチャレロ教授は「有機体としてのマネジメント」を一つのフレームワークとして示し、その際にいくつかの「経営コンセプト」を示し、関係性を明示しました。
図については、同書上巻2ページを参照してください。ここでは参考までにマチャレロが挙げた「経営コンセプト」を列挙しておきます。
<組織内部>
環境トレンド、事業の定義、マネジメント効率、マネジメント・スキル、パーソナル・スキル、マネジメント力、
<組織外部>
イノベーションと企業家精神、組織成果、成果中心の精神、公益、社会的影響、環境トレンド
それ以外に<組織内部>と<組織外部>を「創造的破壊」というコンセプトが貫いています。これらの関係性は、序文の締めくくりの文章がその一端を示しています。
「マネジメント・スキル、パーソナル・スキル、マネジメント効率が相まってマネジメント力を向上させ、事業の定義を実現させる。イノベーションと企業家精神を実現し、成果中心の精神を維持し、組織成果を増大させ、社会的影響の処理を通じて、公益の増進に資させる」
マチャレロ教授が示すようにドラッカーのマネジメントは、全体として意味あるものであり、何かの個別のハウツーの集合体ではないことがわかります。『経営の真髄』は、「有機体としてのマネジメント」を学ぶために現代的にアップデートされた著作です。次回から本文に入っていきます。
佐藤等