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≪『マネジメント』という乾物の戻し方≫

  台風一過、秋らしい空気にかわりました。震災から6ヶ月、いつの間にか今年も2/3が過ぎてしまいました。やり残したことの棚卸しを始めないとなりませんね。

  さて9月11日にドラッカー学会の地方大会が旭川で開催されました。2007年から地方大会は、 <札幌→京都→函館→名古屋→旭川>とリレーされています。はじめに札幌開催をお引き受けし、隔年でここまで運営させてもらいました。

  2005年、ドラッカー教授の96歳の誕生日(11月19日)のお祝いとして準備していましたが、11月11日に逝去されました。立ち上げメンバー30数人で始めた学会も現在では800名を数えるまでに成長しました。

 その間、生誕100年を迎え、その年の12月にあの『もしドラ』(『もし高校野球の女子マネジャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』)が大ヒットしました。同書はいまだに売れ続け、280万部を超える大ベストセラーとなりました。

 そして今年8月、ついに本体のエッセンシャル版『マネジメント』が100万部を超えました。誰も予想していなかった事態です。天国のドラッカー教授が一番驚いているはずです。
 旭川大会のテーマは、「ドラッカー・プレミアムの実践―伝える」でした。ドラッカーの著書は歯ごたえがあり、なかなか読み進められないという声をお聞きすることがあります。その理由は、ぎゅっと濃縮されたジュースのような状態を読むことになるからです。

 ドラッカー教授の著書には、観察した現実をいくつもの「物語」というスタイルで再現して掲載されています。この「物語」から多くのコンセプト(考え方)を搾り出し、体系化して生まれたのが「マネジメント」です。ドラッカー教授の 「マネジメント」はすべて現実が前提にあり、机上で生み出したものはありません。 このことを「現実は理論に先行する」と表現しました。

 こうして生まれた考え方を私たちは、道具として私たちの現実の世界に適用することが求められています。それは、目の前の課題に取り組むための道具そのものです。道具なしに、あるいは間違った道具を手にして問題や課題に取り組んでいると、結果が出なかったり、間違った結果が出たりと苦労も多いものです。「原理原則に従う」といいますが、ドラッカー教授の言葉は、まさにその宝庫です。

 最初は、硬い干したスルメのように少しは歯ごたえがありますが、実に滋養に富んだ食べ物のように善い成果をもたらしてくれます。私の著書『実践するドラッカー』シリーズは、多くの人が乾物を食べやすいようにするための道具になることを意識して発刊させていただきました。

ナレッジアドバイザー 佐藤 等

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