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≪100年に一度の地殻変動に対応する-異常時に打つ手:異常時対処法≫

 9月のリーマンショックを機に一変した感がある世の中、例年と少し違った雰囲気で年末を迎えているのではないでしょうか。100年に一度の変革期に突入したことは間違いありません。変革期の鉄則は行動を変えることです。変え方は、何かを始める、止める、何かを増やす、減らすという4つしかありません。具体的に検討したいものです。
 行動変革のポイントとして11月の和田マネイジメント主催の勉強会で和田一廣先生が
「異常時に打つ手:異常時対処法」とし11項目を示しました。私なりにコメントを付しましたので、この機会に皆さんにお伝えしたいと思います。

1.資金繰り対策:特に金融機関との関係
 今回のショックは金融サイドを震源とし、金融機関のバランスシートが壊滅的に傷んだことに端を発しています。このような状況では貸し渋り、貸し剥がしが起こる可能性が高まります。日本ではかつて経験済みのことです。政府はかかる状況に対応するため、中小企業向けに10月31日に始まった緊急保証枠6兆円を11月に早くも20兆円に拡大し、同融資枠も3兆円から10兆円に拡大しました。この保証枠は保証協会の100%保証であるため従来のものよりも金融機関が貸し出しやすいものとなっています。また貸し渋り110番を開設するなど対策に躍起です。このような環境をよく理解しながら必要な資金量を確保しながら、経営を進めることが求められます。

 しかしながら既に過大債務がある場合には、上記の制度を使っても資金繰りが追いつかない場合があります。その場合には、現在の債務の返済スケジュールの変更を金融機関へ依頼するなど対応が必要になります。ポイントはギリギリまで頑張らないことです。早めの対応で体力を温存し、復活の道を切り拓くことが大切です。

2.売掛金の回収:早期回収と取引条件の見直し
 2つのポイントがあります。一つは手元資金を増やすことを目的としています。月1回の〆を月2回にするなど工夫が必要です。もう一つは貸し倒れリスクへの対応です。今まで以上に取引先の情報を入手し、異常に気づいたら取引条件を変えることです。たとえば5%割引いても手形から現金に変えるなど個別に検討し見直していくことが求められます。

3.販売、営業の不振:なぜ、売れないのか
 昨対比マイナス連続6ヶ月など珍しくない昨今です。しかし経済環境を言い訳にしていては解決の糸口は見つけられません。他に責任を求める姿勢が思考停止へと導きます。この際、自社の何が悪いかを時間をかけて深堀して考えてみる必要があります。他責ではなく、自責思考が道を切り拓きます。

4.商品力の見直し:お客様が本当に欲しい商品か
 この問いはきわめて重要です。異常時のみならず平時にもやっておくべきことです。「お客様はなぜ私たちを支持してくれるのか」、その理由を知るということです。偶然お客様になってくれたお客様であふれている企業は危険です。理由がわからないということは、いとも簡単に去っていってしまうということです。何に価値を持ってくれているのかを至急再確認することが求められます。

5.価格の見直し:低価格路線か
 経済環境が悪くなると競合社が価格を引き下げてくることが考えられます。応戦方法としては<4.商品力の見直し>で価格維持を目論むのが常道手段です。しかしこの見直しに時間がかかる場合には、価格を引き下げて応戦しなければならない状況が生まれます。その際には数量を確保するという思考を働かす必要があります。単価減を数量増でカバーするという発想です。簡単ではありませんが単なる値下げの防戦一方では疲弊してしまいます。今回の戦いは長期戦になります。そのための仕組みを腰を据えて考える必要があります。

6.法的リスク:法律を犯していないか
 経済環境が悪くなると今以上に偽装行為、隠蔽行為により利益を確保しようとする誘惑に駆られます。これらの不法・不当行為が末期的行為であり、企業人として最低・最悪の結果を招くことは白日の下となった事件を思い起こすまでもないことです。どんなことがあっても倫理観を高く掲げ、維持するとの覚悟が活路を見出します。

7.詐欺対策:環境が悪い時にうまい話はない
 環境が良いときでもうまい話しはとても少ないものです。しかし環境が悪くなると不思議とこの手の話が増えてきます。まずは、すべて嘘と決めてかかる姿勢を持つことです。同じことが内部不正についてもいえます。消費者金融など軒並み貸し付け基準が厳しくなる中、内部での使い込み、外部とグルになった不正行為が多発します。組織的な点検が必要な時期です。

8.社員のヤル気度:苦しい時ほど現場第一線のヤル気が大切
 土俵際で誰もが苦しいと思うとき最後に軍配が左右するのは士気、ヤル気のあるなしです。ヤル気にはお金がかかりません。お互いに褒め合う、グッドニュースを報告するなどヤル気を出す小さな工夫を組織全体で取り組むことが特に求められます。

9.悲観的な雰囲気:トップが明るく
 悲観的な雰囲気からうまれるものはすべてマイナスのものです。ピンチはチャンスとばかり全体を鼓舞する必要があります。明るくなる秘訣は、プラスイメージを描くこと、物事を前向きにとらえるプラス思考を維持すること、プラスの言葉を使い続けることなどです。

10.全社一体化:同じ方向に向かっているか
 苦しい時を乗り切る万能の特効薬が一体化です。開業から25年、旭山動物園が廃園の危機から立ち直ったのもこの薬のお陰です。自らの存在意義・社会的役割を確認し、十数人で危機に立ち向かいました。今やお客様は10倍増以上。どんな方向に向かっているかを鮮明化させることが奇跡の復活へと導いたのです。

11.経費と原価の見直し:コストダウンできるものは徹底する
 今回の経済環境の変化は、一時的なものではありません。覚悟して取り組む姿勢が求められます。その際に不可欠なのがコストの見直しです。いったんゼロベースで考え直すことです。非生産的な活動をやめ、人と時間を確保することがポイントです。その上で知恵を巡らす時間を確保することです。学び-小さな実験を繰り返すことです。知恵を絞らない従来型の単なる行動を繰り返すことを厳に慎むことです。

 以上和田先生から頂いた11項目に簡単にコメントを付してみました。いずれにしても何かを変えること、そのための総点検が求められています。リーマンショックはきっかけにすぎません。変革の時代の最終局面に私たちが居るという現実から目を背けてはならないということです。変革の時代は、新たな時代の扉です。新たな常識が支配する時代はもうすぐそこまで来ています。これまでの強みをさらに磨き、新たなやり方でビジネスを再構築するときが今なのです。そのために必要なこと、それが「学び」と「実践」です。

 当事務所では、従来の顧問先様向け「経営相談日」の相談員の陣容を拡大します。和田先生の「異常時」という言葉に意識を喚起され、私どもも異常時対処に少しでもお役に立ちたいと考えたからです。これまでの佐藤等、清水祥行(中小企業診断士)の他、当事務所顧問で年商200億円、従業員規模1000名超の企業を率い、長く経営に当たられた石上隆夫氏をメンバーに加え、皆様方の経営相談に応じる体制を来年1月から整えます。現場を見る視点、志を語る姿勢など学ぶべきこと多き経営の大先輩です。
 相談日は原則月4回を予め定めさせていただいておりますが、その他の日でも調整可能な限り対応させていただきますのでお声掛け下さい(お問い合わせ窓口:福土)。なお和田先生は来年2月23日開催の札幌ビジネス塾にゲストスピーカーとしてご登壇されます。中小企業に的を絞った時流に合った講話は必聴です。何を変えるか、年末年始にじっくりと考えてみたいものです。

ナレッジアドバイザー 佐藤 等

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