イノベーションと起業家精神【経営のヒント 30】
さて今日から『イノベーションと起業家精神』の第Ⅰ部に入ります。第Ⅰ部イノベーションの方法、第Ⅱ部起業家精神のためのマネジメント、第Ⅲ部起業家戦略という3部構成となっています。そして第一章は、本とタイトルとまったく同じです。内容は、起業家とは何かから始まっています。ここは、2回前のメルマガでもこだわりましたが、「企業家」という言葉がピッタリきます。この言葉200年前にJ・B セイという経済学者が使った意外と古い言葉です。
そしてこの言葉の本質をその約100年後にJ・A シュンペーターが言い当てています。シュンペーターは、ケインズと並び称されるべき大経済学者ですが、多くの人には知られていません。「創造的破壊」という言葉は、彼によるものです。「旧結合」を創造的に破壊し、「新結合」を生むことにより経済は、発展する。これが彼の主張です。本質をついた言葉がその著書(『経済発展の理論』の中にあります。「郵便馬車をいくら連続的に加えても、それによってけっして鉄道をうることはできない」。例が古いのは、1926年の著書なのでお許し下さい。ここで郵便馬車は「旧結合」、鉄道は「新結合」です。馬車産業からは鉄道産業は生まれてきませんでした。鉄道は、当時のあった技術、資本などを新たな考えの下で結合させて生まれたものです。シュンペーターは、これを「新結合」とよび、これを行う者は、「企業家」であると述べました。前々回、イノベーションの訳語に技術革新をあてられ<落胆した>と言いましたが、イノベーションの本質が新たな経営資源の結合にあることをあまり理解されていないからです。長くなりますのでドラッカーの一言。
<ドラッカーの一言>
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起業家精神とは、すでに行っていることをより上手に行う
ことよりも、まったく新しいことに価値、とくに経済的価値
を見出すことである。
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新訳『イノベーションと起業家精神-その原理と方法-』(ダイヤモンド社)より
今日は、<シュンペーターの二言>みたいな感じになりましたが、彼は「経営者」と「企業家」を使い分けています。理解いただけますか?ヒントは、今日のドラッカーの一言にあります。「すでに行っていることを上手に行う」<者>は、「経営者」であっても「企業家」ではないのです。この辺りどうしても力が入ります。すみません次回も第一章からお伝えします。
佐藤 等