多面的な能力が求められるマネジャーの5つの仕事【経営のヒント 659】
組織するには、分析能力を必要とする。希少な資源を経済的に使用しなければならない。と同時に、人を扱うがゆえに、正義の原則のもとにあって、終始真摯たることが要求される。
『経営の真髄』<上>p.29
前回、マネジメント(マネジャー)に5つの共通について述べました。
(1)目標を設定すること
(2)組織すること
(3)チームをつくること
(4)評価をすること
(5)人材を育成すること
ドラッカー教授は、これらの仕事について3つの視点で要諦を説明しました。
「分析能力」と「統合の能力」という2つの能力と「正義の原則」という基本の下、真摯たる姿勢が必要であるとしました。
(1)目標を設定することについて
目標を設定するには、個別の目標をどれにするか、どのような尺度ではなるのかなど分析的な能力が必要な一方で、目標間のバランスをとるという統合的の能力が求められます。
(2)組織することについて
組織する具体的な対象は仕事です。仕事は論理的な対象です。つまり、分析の対象になるということです。これに対して仕事を行うのが人間であるがゆえに分析の対象とはならず、統合能力を要し、その際、「正義の原則」の下、真摯さに基礎におくとしました。
(3)チームをつくることについて
分析よりも、一つにまとめるという意味で統合の能力を要します。たとえば、人の弱みではなく強みに目を向ける姿勢などその際にも真摯さに重点が置かれます。
(4)評価をすることについて
評価には分析能力が必要です。成果を反映しているか。自己目標管理に効果的ななど継続的な分析が求められます。
(5)人材を育成することについて
人材の育成については、必要な知識やスキルは何かなど分析的な能力が求められます。しかしマネジメントは人間学であるといわれるように、仕事に臨む姿勢や意欲など非分析的な仕事という側面もあり、これらは人の価値観、信条に関わるものです。人格に関わるという意味で統合的な能力といえます。
これらの仕事は、マネジメントとしてできなければならないものです。多面的な能力が求められています。
狭いところで糸を結べるだけで外科医にはなれませんが、糸を結べなければ優秀な外科医にはなれないように、目標設定することができるだけでマネジメントにはなれませんが、目標設定することができなければ優秀なマネジメントにはなれません。糸を結ぶという技術を向上させることができるように5つの仕事も日々、磨き上げることが優れたマネジメント(マネジャー)への道を拓きます。
佐藤等