「フロイトの錯誤とその壮大な試み」【経営のヒント 402】
今日は『傍観者の時代』第4章「フロイトの錯誤とその壮大な試み」からです。
<ドラッカーの一言>
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フロイトの精神分析こそ、理性的な科学と
非理性的な心の動きを一つの理論に
まとめ上げようとする壮大な試みだった。
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『マネジメント<下>』p.98 1973年 ダイヤモンド社
フロイトは啓蒙思想の子たる理性主義者でした。
ドラッカー教授によれば、この時代に西洋社会に大きなインパクトを与えた二人の思想家が
マルクス、フロイト、ケインズでした。
ドラッカー教授は、彼らのしたことを科学と魔術の統合、論理と経験の体系化を目指し、
合理性を追求しようとするものであったといいます。
しかしその結果、核心部分を理性の枠外に置くことで、理性、合理性を維持しようとしました。
それは一種の疑似信仰のようなもので、その点が論理の脆弱性の背景でした。
結局、フロイトの残したものは科学ではなく文学と評する声が高まっていきました。
当時、世の中は理性主義者が幅をきかせていました。
それは18世紀の啓蒙思想の広まりの残渣ともいうべきものです。
ドラッカー教授は、啓蒙思想を起源とした理性主義的リベラルが
ヨーロッパに全体主義を招いたことを『産業人の未来』(1942)で明らかにしました。
フロイトがドラッカー家に出入りしていたこと、フロイトの業績。
第4章は、そのようなヨーロッパでの姿を収めたワンショットの一章でもあります。
佐藤 等