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マネジメントの修得【経営のヒント 665】

今日にいたってなお、マネジメントの地位にある者自身がマネジメントのもたらしたものの意味を理解していない。自分がどのような文体で話しているかを知らない、モリエールの戯曲『町人貴族』に登場するジョルダン氏と同じである。彼らは自分がマネジメントしていること、あるいは間違ってマネジメントをしていることに気づいていない。
『経営の真髄』<上>p.43

17世紀にルイ14世の宮廷で初演された『町人貴族』は、貴族になりたい愚かな金持ちの町人を主人公とした戯曲です。主人公のジョルダンは、貴族の服を着たり、教師から貴族が身につけている音楽や武術を学ぼうとしたりしますが、貴族になれるものではありません。その成就されない願望によって引き起こされる滑稽な言動を演じ、人々を笑わせます。

肩書やマネジメントに関する情報に触れることで貴族ならぬ、マネジメントになったと勘違いしていないか。ドラッカー教授の警句が響き渡ります。

マネジメントしていることを意識していないのはまだしも、マネジメントとは人を管理することであるなど間違ってマネジメントを理解している状況は最悪です。

自分が用いるマネジメント用語が本来の意味と違っているということは、珍しくはありません。たとえば売上高や利益のことを「成果」だと勘違いしている場合があります。売上高や利益は、業績ですが、「成果」ではありません。ドラッカー教授は、成果は組織の外にあることを示しました。「成果とは、顧客に起こる変化のこと」です。

「成果」の意味は、一例にすぎませんが、普段使っている言葉とマネジメント言語は、同じではありません。同じ言葉を使っていても意味が異なるということです。「自分がどのような文体で話しているかを知らない」―ドラッカー教授の警句を真摯に受け止め、マネジメントを修得したいものです。

 

佐藤 等(ドラッカー学会理事)

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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