人材確保の施策も緊急性の高い重要課題【経営のヒント 678】
平均余命と高年者人口は、この300年伸び続けてきた。これに対し、若年人口の減少こそまったく新しい現象である。
『経営の真髄』<上>p.82
先進国の出生率は人口を維持できる水準にありません。それは、就労年齢人口の減少として諸国に問題を突きつけています。
たとえば日本では、2030年における65歳以上の人口は成人人口の半数を占めます。定年の延長や廃止の話題が続くのはこのためです。
しかしアメリカ合衆国のみこの間、就労年齢人口を増やし続けてきました。移民を積極的に受け入れたからです。その他の国は、総じて移民に慣れていません。政策が揺れています。昨今では、ヨーロッパ諸国を中心に移民の増加に厳しい姿勢で臨む国が増えています。
高年者人口の増加は、その層に人気のある政策を掲げる傾向を助長します。たとえば年金制度の改革には後ろ向きです。つまり自分たちが将来、損する選択は好まれないということです。移民の問題とともに年金は、政治の2大テーマと言えましょう。
人口構造の変化の影響は甚大です。しかもタイムラグはありますが、ほぼ確実に起こる未来でもあります。つまり備えることができるということです。個別企業においては、商品市場における影響もさることながら、人材確保の施策も緊急性の高い重要課題です。
定年に関する考え方、若年層の確保の工夫、定着率向上の方策など中長期的に考えることがたくさんあります。コロナ禍という特殊事情の影響を横に置き、本質的な方針を考える時期に差しかかっているのではないでしょうか。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)