「プロの経営者、アルフレッド・スローン」【経営のヒント 428】
今日も『傍観者の時代』の第14章「プロの経営者、アルフレッド・スローン」からです。
今回でなんと15回目です。
では、今日の一言です。
<ドラッカーの一言>
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裸の王様になっていないか確かめる必要が
あるんですよ。
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『傍観者の時代』p.333 1979年 ダイヤモンド社
ドラッカー教授のもとにGMから調査依頼の電話が入ったとき、
依頼主は副社長のドナルドソン・ブラウンでした(第415号)。
そのことについて当時CEOのスローンは、ドラッカー教授にあったとき次のように言いました。
「ドラッカーさん、私があなたをお招きしたのではないことはもうご存知と思います。
私にはまだ目的がよくわかりません。
同僚がぜひやりたいというので始めたことです。
したがって私としては、あなたが仕事をしやすいようにしてあげることしかできません。
助けがいるときはいつでも来てください。
何でも聞いてください。
必要な情報は何でもいってください」
初めて会った時には、冴えない外見を見て正直がっかりしたと告白しています。
しかし、上記の言葉で始まる一連の発言を聞いた瞬間、
「私は、なぜ彼が、GMの強力かつ攻撃的なトップマネジメント・チームにあって、
不動の権威を保持しているかを直ちに納得させられた」といいます。
極めつけは次の言葉でしょう。
「私のほうから、何を調査して何を提案してほしいかなどといったことを
申し上げる気はまったくありません。
でも、一つだけ申し上げておきます。
ここには、副社長だけで35人います。
いろいろな者がいます。
しかし、誰かの力を借りなければ、決定のできない者は一人もおりません。
ですから、正しいと思われたことはそのままご提案ください」。
「誰が正しいかなどということは気にしないでください。
誰がどういう提案や結論をほしがっているかも気にしないでください」。
公正無私な姿勢。
ある時、ドラッカー教授は、スローンが議長の会議のあとに部屋で聞かれました。
「何か質問や意見はないか」。
ドラッカー教授は次のように答えます。
「私が何を申し上げても気にされないのではないですか。
50年の経験がおありになるのですから」。
これに対してスローンが答えます。
「50年もトップにいると、何でもわかった気になってしまいます。
したがって、裸の王様になっていないか確かめる必要があるんですよ。
中の者はなかなかいってくれませんのでね」。
スローンの経営者として突出した資質が人の意見を聞くことでした。
そのことで多くの目と耳をもちたいと考えていました。
こうしてドラッカー教授とスローンの交流は始まり、退任後も続きました。
佐藤 等