「プロの経営者、アルフレッド・スローン」【経営のヒント 429】
今日も『傍観者の時代』の第14章「プロの経営者、アルフレッド・スローン」からです。
16回目です。
ドラッカー教授が当時のGMの経営から受けた影響の大きさがわかります。
<ドラッカーの一言>
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人を見分ける力はなくとも、
人事の誤りを少なくすることはできます。
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『傍観者の時代』p.334 1979年 ダイヤモンド社
ドラッカー教授は、GMの調査に入ったときすべての会議の傍聴を認められていました。
トップマネジメントの会議も例外ではありませんでした。
1944年に入ると、トップマネジメントの会議の議題に変化が表れました。
それまでの戦時生産に関わるものから、戦後生産に関わるものに変化していました。
その中で教授が気づいたことは、人事にかなりの時間を費やしていることでした。
しかも、はるか下のポストの人事にも時間をかけていました。
あるときドラッカー教授は尋ねます。
「このような下の人事によく4時間もかけられますね」と。
教授に「このような下の人事」と言わしめたポストは「職長」でした。
スローンの回答は、
「GMは、重要な決定を行うためにかなりの報酬を私に払っています。
デイトンのあの職長の人事が間違っていたら、たくさんの決定が画に描いた餅になります。
決定を具体化するのは、あのポストです。時間がかかることなど何でもありません。
正しい人事のために4時間をかけなければ、後で400時間とられます。
それだけの時間はありません」というものでした。
そうして次のように続けました。
「私には、人を見分ける力があると思われるかもしれません。
しかし、そのような者がいるわけがありません。でも人を見分ける力はなくとも、
人事の誤りを少なくすることはできます」。
スローンの手法の一端が記されています。
たとえば出席者の全員が多くの危機と問題を切り抜けてきたスミス氏を支持した中、
次のように問いかけます。
「スミス君の実績はたいしたものに見える。
しかし、そもそも彼は、どうしてそのような問題に引きずりこまれたのだろうか」。
そうすると、スミス氏を支持する声は消えたのです。
またあるとき、スローンは、
「ジョージ君のできないことばかり取り上げているようだ。
彼がしたことの結果はどうなったのか。彼が得意なのは何だろう」と問いかけます。
スローンはその説明を受けます。
「切れるわけでも冴えているわけでもない。しかし実績はあげているようだ」。
人事は成功しました。
人事に関する意思決定に関する原則は、重要な意思決定には時間をかけよという
一般原則に通じています。
見習いたいものです。
佐藤 等