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コンセプトの変化【経営のヒント 685】

前回まで1970年頃まで通用した5つの常識の変化について述べてきました。

第一に、企業が主人、従業員が従者とされた。
第二に、従業員のほとんどがフルタイムで働く者とされた。
第三に、事業は、必要とされるあらゆる活動を同一のマネジメントの傘下に置くことによって、最もよくマネジメントされるとされた。
第四に、市場では、供給側とくにメーカーが主導権をもつとされた。製品やサービスの情報は供給側が持っていた。
第五に、あらゆる技術がそれぞれの産業に属し、逆にあらゆる産業でそれぞれに特有の技術を持つとされた。

50年経ち、新しい常識は塗り替わりました。その要因は「コンセプトの変化」だとドラッカー教授はいいます。

まず年金基金と投資信託が企業の新しい所有者として登場した。続いて、さらに決定的な要因として、知識労働者が経済活動における最大の資源、社会における代表的な存在として登場した。もたらしたものは、近代企業なるもののコンセプトの変化だった。
『経営の真髄』<上>p.97

「コンセプトの変化」とは何か。端的に述べると1970年頃までの「企業」と、今私たちが見ている「企業」とは、同じく「企業」という名前がついているが、その意味するところが異なるということです。つまり新しい常識の下、マネジメントを行わなければならないということです。常識が180度変わったといても言い過ぎではありません。

たとえば、私は、1961年生まれですから社会に出た1980年代には、すでに変化は起こっていました。しかし古い「企業」制度とその時代を過ごしてきた諸先輩から仕事を教えてもらっていますから、古さをたっぷりと引き継いでいます。

私の子ども世代では、このような古さはだいぶ更新されつつあるかもしれませんが、まだ世代は混在している状況です。日本のように経営者の年齢が高い国では、なおさらです。日本が沈滞している最も根本的な原因なのかもしれません。

次回からは、新しい常識の下、起こりうる特徴的なマネジメント上の動きを見ていきます。

佐藤 等(ドラッカー学会理事)

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