自社の知識労働者にとっての価値は何か【経営のヒント 686】
1970年頃まで通用した5つの常識の変化について述べてきましたが、これらの常識が変化したことで何か変わり、どのような影響をもたらしているかを見ていきたいと思います。
1970年頃までの常識では、企業が主人、従業員が従者とされた。しかし、今は人が組織を必要としていた時代から、組織が人を必要としている時代に変わりました。知識労働者の出現が理由です。
かつての肉体労働者は、何をすべきかは指示されるものとしていた。これに対して知識労働者は、自分の専門分野では自らが意思決定を行うべきものとする。
『経営の真髄』<上>p.99
知識労働者の仕事の仕方は、指示命令ではなく、自ら考え、決定し、行動することです。少なくとも専門分野では、そのように仕事をすることを求められています。知識労働者のマネジメントのポイントは、知識労働者の立場でマネジメントすることです。顧客の立場でマネジメントすることと似ています。
この観点からドラッカー教授は、知識労働者にとって重要なことを4つ指摘しています。以下の4つの点は、知識労働者が何に価値を置いているかを示しています。ドラッカー教授の問いに「顧客にとっての価値は何か」がありますが、「自社の知識労働者にとっての価値は何か」を具体的に問うことに通じています。
(1)組織が何をしようとしており、どこへ行こうとしているかを知ること
(2)責任を与えられ、かつ自己実現できるところに配置されること
(3)継続学習と継続訓練の機会をもつこと
(4)何より専門分野に敬意をはらわれること
組織のマネジメントを預かる者は、この変化に真正面から取り組まなければなりません。つまり「われわれに足りないものは何か」を問うことが求められています。自戒を込めつつ、向き合いたい問いです。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)