方向づけ【経営のヒント 474】
組織に属する一人ひとりがどちらを向いているかは重要です。
なぜなら一人ひとりはそれぞれに個性を持ち、強み(資質)もワークスタイルも価値観も異なるからです。
つまり方向性を示さなければそれぞれのやり方と価値観で行動し始めるのです。
世にいうベクトルがあっていない状態です。
<ドラッカーの一言>
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ほとんどの人が下に向かって焦点を合わせる。成果ではなく努力に焦点を合わせる。
組織や上司が自分にしてくれるべきことを気にする。そして何よりも、自らがもつべき
権限を気にする。
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『実践するドラッカー 〔利益とは何か〕』p.110
原典―『現代の経営』p.78
そこでドラッカー教授は「方向づけ」を重要視しました。
すなわち、組織に属している者が顔を上げると向くべき方向がわかるという状態を作ることです。
教授のマネジメントの一面の本質は「異なるもの(者)に方向性を与える」と表現することができます。
そのための道具として「成果」があります。
「われわれにとっての成果は何か」との問いは、組織に方向性を与える問いです。
成果の上位にはミッションという道具もあります。
「われわれのミッションは何か」を第一に問うのはそのためです。
これらがあってはじめて「なすべきこと(貢献)は何か」という問いが機能します。
異なる個性を持った人の強みだけを生かせるのは成果がはっきりしているときだけです。
方向づけがしっかりと行われていないと「下に向かって焦点を合わせる」しかなくなります。
顔を上げて上を向いても方向性に関するものは何もないからです。
また成果を明示していなければ、「なすべきこと」という思考は起こらず、
「できること」とか「やりたいこと」を始め出します。
「できること」には、権限を有していることと能力を有していることがあります。
いずれにしても「なすべきこと」を行わないかぎり、成果には結びつきません。
ベクトルは方向と大きさをもった量のことです。
意識が向くべき方向が定まらないということは、持てる個人の力を発揮できないということです。
教授がチームの目的を人の強みを生かして、弱みを意味のないものとするとしたのは、
方向性があって可能となることなのです。
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<実践のための問い>
あなたの組織を導く方向性の道具を具体的に挙げ、内容を記してください。
佐藤 等