心が感じる価値を定量化することはできない【経営のヒント 691】
「外の世界の情報が、ついにインターネットで手に入るようになった。」
『経営の真髄』<上>p.107
「いいね!」、buzzワードなど、私たちは、人々の反応がインターネット上にあふれる時代の中にあります。
従来、情報といえば組織内部についてのものと相場は決まっていました。パーソナルコンピューターの普及とともに、個々のデータは、分類され、定量化され意味ある情報として整理されて私たちの目の前に山のように積みあがる時代になりました。紙で出力しなければ「山」にはなりませんが、かつてそのような時期もありました。
あまりの多さに重要な情報を見失いがちです。さて、ドラッカー教授は「ついに」と表現したように、外の世界の情報、端的に表現すれば市場や顧客に関する情報です。
しかしユーザーあるいは潜在的ユーザーたちが発信する、氾濫する情報を目の前に茫然とし我を失うというのが本音ではないでしょうか。
私たちが欲しい情報は、トレンドではなくシフトに関する情報です。トレンドは短期間に流行りすたれる類のものです。去年の流行語大賞を覚えていないことが多いのは、その後、そこ言葉の価値が減じたからにほかなりません。
シフトとは、後戻りしない、本質的な変化のことです。コロナ禍によってこれまでもあったテレワークが進展しました。揺れ戻しはあると思いますが、一部の企業では恒久的な働き方として導入するところも増えています。これなどは、シフトといってよいでしょう。
シフトやトレンドといった変化は、私たちの心がつくり出すものです。私たちは、心がつくり出す価値が社会に定着するかどうかを見極めなければなりません。ドラッカー教授は、「社会の重心が動く」と表現することもあります。
心が感じる価値を定量化することはできません。質に関する分析が必要です。つまり私たちがこれまで情報に対してとってきたアプローチ、分類や定量化による分析というは通用しないということです。
質を質として知覚し、そこで得られた価値や意味を分析することです。我慢して定量化しないことです。たとえば、アンケートなどでせっかく質に関する情報を得たのに、分類し、定量化しないことです。
意味や価値を考えるトレーニングを積むことが重要です。インターネット上の情報から何を得るかが、問われています。組織能力として磨いていきたいものです。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)