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人をマネジメントするのではなく人をリードする【経営のヒント 696】

「フルタイムの正社員さえ、これからはボランティアのようにマネジメントしなければならない。(中略)動機づけ、とくに知識労働者の動機づけは、ボランティアの動機づけと同じである。周知のようにボランティアは報酬を得ないがゆえに、仕事そのものから満足を得る必要がある」
『経営の真髄』<上>p.125

前回からドラッカー教授が挙げた7つのパラダイムシフトについて見ています。

第三のパラダイムシフトについてです。
旧パラダイム:人のマネジメントの仕方には一つの正しい方法がある
新パラダイム:人のマネジメントの仕方は状況によって異なる

ドラッカー教授は、前提とする状況の変化があるといいます。主なものをまとめると次にようになります。

従来-組織のために働く者はフルタイムの正社員である
現在-組織のために働く者はパートタイムやアウトソーシング先の人たちである

従来-組織のために働く者はマニュアルワークを行う
現在-組織のために働く者の多くはナレッジワークを行う

従来-上司は部下の仕事に通じ、部下は誰かの下で指示命令によって働く
現在-上司は部下の仕事に通じておらず、最先端の専門性を生かし、上司の方針の下で働く

ドラッカー教授は、これからの上司と専門家の関係は、オーケストラの指揮者と楽器演奏者の関係に似ているといいます。指揮者はチューバの演奏はできないように、上司は部下の仕事を行うことはできない、あるいは期待されていいません。

上司の仕事は仕事を方向づけることです。成果やその基準、価値やその基準などを示すことです。また知識労働者の判断結果を組織の期待とズレていないかを確認することです。

仕事上のパートナーとして人をマネジメントすることが求められています。パートナーシップの本質は、対等性です。それゆえ相互が求められます。

ドラッカー教授は、「人をマネジメントすることは、仕事をマーケティングすることを意味する」といいます。その心は、マーケティングの出発点は、顧客視点、つまり「相手が何を望むか」「相手にとっての価値は何か」「相手の目的は何か」「相手にとっての成果は何か」を知ることです。

以上から私たちのパラダイムシフト後の人のマネジメントのあり方を明確にすると次のようになります。

従来-人をマネジメントする(指示命令に従って働く)
現在-人をリードする(方向づけの下、主体的に動く)

つまり、人をマネジメントするのではなく人をリードすることです。リードするという言葉の裏側にフォロワーの存在を忘れてはなりません。オーケストラでいえば演奏者がリーダーです。それぞれの持ち場で腕を磨き、結果を出すフォロワーである知識労働者をいかに育てるか。あるいは育つ土壌をどうやってつくりあげるか。それがパラダイムシフト後のリーダーの課題であり仕事です。

 

佐藤 等(ドラッカー学会理事)

 

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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