組織という道具には目的がある【経営のヒント 541】
私たちは成功の方法を求めすぎているのではないか。
ドラッカー教授からマネジメント哲学を学ぶほどに、そう思わずにはいられません。
それはマネジメントの本質が原理・原則にあるからです。
そこにあるのは成功の文字ではなく、失敗の文字です。
原理・原則にしたがっているからといって成功は保証されるわけではありません。
しかし原理・原則に反したとき長期的には必ず失敗が約束されています。
この冷徹な事実から眼を背けてならないと思うのです。
教授からそマネジメントの哲学を学べば学ぶほどマネジメントとは失敗しないために
身につけなければならないものだということを思い知らされます。
成功を求めて原理に反した方法をとるという愚を犯さないために原理のマネジメントを
大いに活用したいものです。ぜひ方法ではなく原理を手にしたいものです。
【マネジメントの原理2】
組織という道具には目的がある
前回の続きです。
道具は目的に相応しいようにできています。
目的外で使用すると恐ろしいことになります。
たとえば自動車の基本的な目的は移動にあります。
しかし人を傷つける凶器にもなります。
目的に反して道具を使ってはならないのです。
組織という道具の目的は3つあることを前回示しました。
第一に、社会において特有の役割(ミッション)を果たすことです。
第二に、所属する人を成長させることです。
第三に、社会にある新しい課題を解決することです。
今日は第一の目的について考えてみます。
組織は特定の役割を担っているとはどういうことでしょうか。
何でもできるという組織は世の中に存在しません。
たとえば楽天という会社はネットショッピングを手掛けており、その子会社である楽天という
球団はプロ野球というパフォーマンスを観せるというサービスを提供しています。
同じグループでも社会的な役割が異なります。
それぞれの組織は、その組織でなければ提供できない財やサービスを提供しています。
プロ野球の球団であればどこでもいいのではありません。
楽天ではなく日ハムを応援するのには理由があるのです。
特有の役割の「特有」とはそのことを意味しています。
極端な話、同一の財やサービスを提供しているように見える業種であっても選好する理由が
あるのです。
どこのコンビニに行くのか、どこの保険会社の保険に加入するのか…それぞれに理由が
あるのです。
「特有」を突き詰めるほどに独自性が高まります。単なる差別化ではなく独自化です。
組織は社会において特有の役割を果たす存在である(マネジメント原理3)。
これもまた原理です。
ここから「『特有』とは何か」を考える、つまり独自化を図るという
方法が生まれます。
原理は方法を生み出す源泉です。
原理を知っていれば方法を生み出すことができます。
「方法ではなく原理を手にしたいものです」と述べたのはそのためです。
原理のマネジメントを身につけていきましょう。
佐藤 等