利益には3つの役割【経営のヒント 555】
前回、前々回とお伝えしてきた原理は「利益には3つの役割」に関するものです。
1.利益は、未来のリスクと不確実性をカバーする
<マネジメントの原理14>
2.利益は、事業の拡大とイノベーションに必要な資金調達の基盤となる
<マネジメントの原理15>
3.利益は、事業活動の有効性と健全性を測定する
<マネジメントの原理16>
今日は最後の原理16について説明しましょう。
3つの原理は、事業と利益が密接に結びついていることを示しています。
2.は利益が、事業の拡大やイノベーションための資源となることを示しています。
しかし、これらの目的に使われる資源が当初の予定に反して、不確実性やリスクに
さらされたときそれをカバーするのは過去に蓄積した利益です(1.)。
その意味で1.と2.は同一線上にあります。
さて3.です。
この原理は少し毛色が異なります。
利益が事業活動の有効性と健全性のメジャーになるというのです。
ここで測るべき対象は「事業活動の有効性」と「事業活動の健全性」です。
このメジャーの目盛は利益で表されます。
事業活動自体を測定対象としていることからマネジメント上の利益と私は呼んでいます。
これに対して会計上の利益は、一般に法人全体の業務成績の好不調を測定対象とし、
その目盛に利益を用いるといってよいでしょう。
利益は計算をして終わりというのが会計上の利益です。
利益を表す言葉である赤字や黒字はそのことを端的に示しています。
さてマネジメントに利益という道具を生かす際のポイントが
「事業活動の有効性」と「事業活動の健全性」という視点です。
事業とはプロセスである<マネジメントの原理8>と関係しています。
これらの測定対象は、事業というプロセスの巧拙を判断しようとするものです。
事業の有効性とは、そのプロセスから生み出される経済価値が顧客の支持を得ているか
どうかを判定するものです。
利益や利益率のこれまでの趨勢、将来見込を勘案しながら市場における顧客支持を定性的に
判断することになります。
すなわち今後。顧客支持を増すことができるのか、もしくは市場の中で競合と横並びの
価値しか提供できないのかという判断を下すことになります。
一般的には差別化や独自化が進んでいるのか、その逆なのかということになります。
事業の健全性とは、有効性の判断にしたがって経営資源の配分を変え、ヒトやカネを適切に
切り替えて運用しているかどうかを問うものです。
具体的には、事業活動に、さらに力を入れる、力を抜く、撤退する、本格的に参入する
など判断を行う際の基準となるものです。
一般に事業活動は、既存の活動を増やす、減らす。新しい活動を始める。既存の活動を
やめるという4つの軸で考えることになります。
言葉で説明するには難しい面があります。
上記については拙著『実践するドラッカー〔利益とは何か〕』p.254~259をお読みください。
具体的数値を用いて解説しています。