経済的なプロセスをいかに充実させるか【経営のヒント 698】
「マネジメントとは、経済連鎖全体における成果に焦点を合わせるべきものである」
『経営の真髄』<上>p.136
ドラッカー教授が挙げた7つのパラダイムシフトについて見ています。今日は、第五のパラダイムシフトについてです。
旧パラダイム:マネジメントの範囲は法的に規定される。
新パラダイム: マネジメントの範囲は経済的なプロセスを前提とした対等のパートナーシップによって規定される。
マネジメントの範囲について。ドラッカー教授は、3つのパラダイムとそのシフトを描きました。
最初のパラダイムは、「系列」モデルです。系列は、日本企業に特有のものと思われていますが、その原型はアメリカのGMを率いるウイリアム・C・デュラントだといいます。系列は、部品メーカー等の吸収合併によって行われました。つまり資本によって結びついた関係性であり、マネジメントは一企業単位という法的な範囲でなされました。
第二のモデルは、シアーズ・ローバックが用いた「提携」モデルです。商品供給企業と契約を締結し、マネジメントを行いました。マネジメントは、経済的なプロセスに統合することで行われました。すなわち、圧倒的な需要の束を支配し、供給者を従属させることで行われました。
第三のモデルは、「対等かつ独立的なパートナーシップ」です。研究開発型のベンチャー企業と大手製薬会社がパートナーシップで手を握るケースなどです。ベンチャー企業がもつ技術や知識などが経済的なプロセスに決定的な影響を与える場合などこれにあたります。
マネジメントは、資本的な支配関係から経済的なプロセスのどこに位置するかというポジション占拠力によって行われるようになり、かならずしも小が大に従うだけでは成立しなくなりました。
いまや自社の事業や製品力の興隆は、経済的なプロセスをいかに充実させるかにかかっています。あなたの中で、パラダイムシフトは起こっているでしょうか。プロセスからはじき出されないためにも考え続けていきたいものです。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)