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マネジメントの対象と国境は一致しない【経営のヒント 699】

「マネジメントの対象と国境は一致しなくなった。もはやマネジメントの対象を政治的に規定することはできない。」
『経営の真髄』<上>p.138

ドラッカー教授が挙げた7つのパラダイムシフトについて見ています。今日は、第六のパラダイムシフトについてです。

旧パラダイム:マネジメントの対象は国境で制約される。
新パラダイム:マネジメントの対象と国境は一致しない。

国境は制約条件にすぎないとドラッカー教授はいいます。現代ではこのパラダイムのシフトは進んでいると思います。

たとえば、GAFAに代表される巨大情報産業に対する課税問題、つまり利用者である各国国民へのサービス提供とそこからもたらされる収益の越境問題です。各国政府は、課税問題に手を焼き、なかなか有効な方法を提示できないでいます。

また米中対立やウクライナ紛争は、サプライチェーが多くの国に張り巡らされている現状を露呈し、安全保障と経済合理性の優先順位をどうするかという問題に先鋭化されています。国境線の現状を変更しようとする動きにマネジメントは翻弄されています。

20世紀の二つの大戦は、マネジメントによる生産性向上が勝敗を決する要因になりました。即ち大量生産の実現が物量戦を生んだといえましょう。

その後、大きな戦争は起きないことを前提にしたかのような現代のサプライチェーンの拡張姿勢は米中対立やウクライナ紛争などで試されています。安全保障と経済合理性の優先順位が変わったということです。

製造業を中心に各種部品が入りにくいという状況が1年以上続いています。中小企業もグローバルなサプライチェーンの影響を強く受けています。マネジメントにおける新しいリスクが顕在化しています。構造的なシフトが起こるのか、時間はかかるけれども元に戻るのか。見きわめと判断するための見識が試されています。

 

佐藤 等(ドラッカー学会理事)

 

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