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自己目標のための成果に関する情報提供にとどめる【経営のヒント 594】

ここまでは人のマネジメントという流れの中でマネジャーの5つの仕事(以下再掲)から
人のマネジメントに関係する原理を取り出してきました。
ここでは、いったん人のマネジメントを離れてマネジャーの5つの仕事からまだ取り上げ
ていないもの―以下の1.2、4.から原理を取り出してみます。
人のマネジメント無関係というわけではありません。
むしろ前提であり、延長線上にあるものです。

<以下再掲>
1.目標を設定する
2.組織する
3.動機づけとコミュニケーションを図る
4.評価測定する
5.人材を開発する

さて今日は「3.目標を設定する」を取り上げます。

このテーマは少々複雑です。
それゆえ実務的には誤解も多い領域です。

まずは、目標に関する主な局面です。
1.目標設定
2.目標進捗に関する測定
3.目標評価
4.フィードバック

これらの局面は全社、部門などでも行われるとともに自己目標管理という個人レベル
でも行われます。
このあたりの仕組みの趣旨をよく理解しないとせっかくの取り組みも台無しになって
しまいます。

最も多い誤解・誤用は、自己目標管理を組織の昇進や昇格と結びつける運用です。
自己目標管理の目的は自己評価と自己成長にあります。
組織の評価という点が入り込む余地はありません。

昇進や昇格に関する人事評価が不要といっているわけではありません。
明確に別の仕組みとして運用する必要があるということです。
自己目標管理はキャリアプランなど長期的な人材開発として用いるべき方法です。
しかも重要な方法です。

自己目標管理は、後世エドワード・L・デジが内発的動機づけ理論の中核的要素に
すえた「自己決定」と「有能感」を基礎としています。
すなわち自己目標は自分で決定します。
マネジャーが関与できるのは組織の方向とその目標がずれていないかを確認する
ことまでです。
具体的には、「組織が成果を出すためにどのような貢献を行うか」「組織が成果を
あげるためにどのような強みを伸ばすのか」が明確に目標化されていることを確認
することです。
そうでなければアドバイスし、導く必要があります。
ノルマを割り当てるような目標の立て方はNGだということです。
与えられた目標は外発的であり、著しくモチベーションを減じさせます。

自分で立てた目標は自己評価します。
目的は「有能感」を感じ、自己成長を実感するためです。
ここに組織は干渉してはなりません。
成長とは自分で能力や貢献を実感し、自己確信を高め、自信をつけることです。

では組織は何をするのか。
組織が求められるのは、自己目標の進捗に必要な情報を提供することです。
組織の成果とは、組織の外で起こる変化、つまり顧客に起こる変化のことです。
この成果に関する情報を組織内部にフィードバックし、組織人は各々の貢献を確認し、
当初の自己目標が達成されたかどうか、目標の設定の仕方に問題はなかったかどうか、
次期に掲げるべき自己目標は何か(フィードバック)などを自己評価しなければ
なりません。

長くなりそうなので原理としてまとめを行い、全社目標については次回に機会を
譲ります。

<マネジメントの原理104>
自己目標管理の目的は自己成長にある
自己目標の決定に組織は関与せず、自分自身で決定する
自己目標は部門やチームへの貢献という形で定める
自己目標の評価は自分で行う
組織の関与は、自己目標のための成果に関する情報提供にとどめる

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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