診断と分析から始める【経営のヒント 707】
われわれはこれまで、苦境にある組織を蘇生させる魔法の杖を持つ人を捜し求めてきた。しかし事業の定義を定め、維持し、蘇生させるために、重役室にジンギスカンやレオナルド・ダ・ヴィンチが必要なわけではない。必要なのは天才ではない、勤勉さである。賢さではない、真面目さである。
『経営の真髄』<上>p.164
稀に魔法の杖をもっているように見える人が奇跡を起こします。しかし、奇跡を起こす人を待っている訳にはいきません。しかも「実際に奇跡を起こした人たち自身が、カリスマ性、予言、秘訣などといったものを強く否定している」といいます。
では、天才ではない普通の人は何から始めればよいのでしょうか。
ドラッカー教授は、「彼らは診断と分析から始める」といいます。何を診断・分析するのか。
それはただ一つです。事業の定義は陳腐化していないか。本章(事業の定義)ではこの一点を見てきました。奇跡に頼らず原理原則に忠実に勤勉に、真面目に行うだけです。
原理原則とは、(1)その事業は組織のミッションにしたがっているか、(2)その事業は自社の強みを基盤にしているか、(3)その事業は経営環境に適応しているかを問うことです。
そして、これらの前提として廃棄すべきことは何かを問うことです。一度立ち止まってじっくりと考えてみたいものです。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)