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利益は、目的ではなく条件である【経営のヒント 708】

企業とは何かと聞けば、ほとんどの企業人が営利組織と答える。経済学者もそう答える。この答えは間違っているだけでなく的はずれである。
『経営の真髄』<上>p.167

ドラッカー教授は「的はずれ」と強調した「営利」、つまり利益を目的として業を営むこと。

利益は、目的ではなく条件であるといいます。この認識の差は実は大きいのです。利益をあげることを目的とすれば、たとえば法令を犯したり、倫理をないがしろにしたりという行動につながらないとは言い切れません。それが目的だと認識されていることから思考の優先順位が変わってしまうかもしれないのです。

経営者は、そのような誤解を招くような態度と取ったり、言葉を使ったりしていないでしょうか。リコール対象の製品と知りながら販売を続けたり、産地偽装を行ったり…。もしかしたらその遠因は、利益を目的だと勘違いしているからかもしれません。

「条件」は、決して楽な基準ではありません。「目標」より厳しいといえましょう。それゆえドラッカー教授は、「企業活動や企業の意思決定にとって、原因や理由や根拠ではなく。その妥当性の判断基準」だといいます。

赤字であれば、企業活動やその元となった意思決定に問題があったということです。その意味では「赤字の機能」は重要です。活動や意思決定の良否一つのセンサーです。利益というセンサーがちゃんと機能するようにしておくことは経営者の最低限の責任です。

あなたは利益をどのように認識していますか。

 

佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)

 

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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