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組織は社会に存続を許されているにすぎない【経営のヒント 718】

企業は、社会と経済のなかに存続しており、社会と経済が有用かつ生産的な仕事をしているとみなすかぎりにおいて存続を許されているにすぎない。
『経営の真髄』<上>p.193

昨今、SDG‘sが流行である。ドラッカー教授は社会的責任をマネジメントが発明されたといわれる当初、つまり『現代の経営』(1954)から目標に掲げていました。

組織の社会的責任の第一義は、社会に有用な製品やサービスを提供することです。その意味で組織は社会的機関であると位置づけられ、公器と呼ばれています。

第二に組織は存在することで負の影響を社会に与えているといわれています。たとえば工場であれば、騒音や二酸化炭素を大量に出しているかもしれません。自動車メーカーであれば交通事故を生み出す原因を世に送り出しているといえます。また都心にオフィスを設ければ交通渋滞や通勤ラッシュを生み出す元凶となっているかもしれません。

これら負の側面を解消するのも組織の社会的責任の重要な側面です。SDG‘sはどちらかと言えばこのような傾向の社会的責任と関係しています。

かつて自動車メーカーはシートベルトを開発し、今またセンサーや画像技術などを用いて追突事故の軽減に努めています。人々は利便性とリスクを天秤にかけ交通事故の発生を半ば諦め、自動車を普及させてきましたが、無事故へのメーカーの挑戦は今も続いています。

ブラック企業などの存在も負の側面が強調された表現です。負の側面の解消は企業に委ねられています。放置すれば組織存続に黄色信号がともります。組織は社会に存続を許されているにすぎないのですから。

3つ目の社会的責任は、社会の新しい課題を積極的に解決する責任です。現代は組織社会です。組織をとおして人々は社会の問題や課題に向き合うことが基本となっています。コロナ禍において最前線で課題解決に奔走したのは政府や行政機関ではなく医療機関だったことはその象徴です。その意味で組織は、新しい課題を見てみぬふりはできないということです。積極的に挑戦することがイノベーションの機会となり、社会という人間の環境によい影響を及ぼすことになります。

社会と人間の中間に合って組織は、これらの責任を果たすことが当然に求められています。マネジメントに携わる者は真剣に取り組まなければ、その資格条件を失うことを肝に銘じたいものです。

 

佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)

 

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