「企業家」というコンセプト【経営のヒント 727】
偉大なイノベーションは、理論上の仮説を現実の事業に転換することによっても実現されてきた。
『経営の真髄』<上>p.208
前回、「事業のビジョン」というテーマでした。具体例として、IBMの基礎を築いた「データ処理」というビジョンを挙げました。
今回のイノベーションは、理論上の仮説を元にしています。ドラッカー教授が挙げた事例は、社会哲学者サン=シモンの「投資銀行」です。そしてさらに遡るとジャン=バティスト・セイの「企業家」というコンセプトです。
産業の担い手となる「企業家」。それに資金を供給する一方の担い手である「投資銀行」。両者の存在によって資本に方向づけを与え、国の産業化を促進さることができるという仮説が成り立ちます。これが、現在のベンチャー・キャピタルの原型です。
現在でも、たとえば「メタバース」や「ブロックチェーン」というコンセプトは、様々な事業に転換されようとしています。これらは偉大なイノベーションとして実現していく可能性を秘めています。
「企業家」という新しいコンセプトが、「銀行」という既存のコンセプトに出会い、「投資銀行」という事業が生まれたように、「ブロックチェーン」が、「資産」という既存のコンセプトに出会い「暗号資産」という事業が実現しました。
あなたならどんなコンセプトとコンセプトを結合しますか。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)