格段の想像力、勇気、リーダーシップ【経営のヒント 757】
「知識労働では、(中略)自ら動機を持ち、自ら方向を決めるのでなければ、生産的に働くことはできない。自ら何かを生み出せなければならない。」
『経営の真髄』<上>p.321
50年前、ドラッカー教授は「知識労働者のマネジメントは、まったく新しい種類の課題である」と宣言しました。まさに今、その状況に日本はあります。
現代は、知識労働者が生産要素である知識を持っている時代。組織を移動しやすい時代。これまでは、お金をモノに投資し、工場などに人が集まってモノを生み出す時代でした。モノとカネが主要は生産要素でした。
ところが時代は、1960年代から知識社会に移行し、今は真っ只中です。ポータブルスキルなるコトバを若手が使いだし、組織の移動を前提に人生の設計を行う人が増えています。ヒト・モノ・カネと言われてきた経営資源もヒト、つまりヒトが持っている「知識」―スキル、能力、経験などに完全にシフトしています。
「知識労働者のマネジメントは、格段の想像力、勇気、リーダーシップを必要とする。肉体労働者のマネジメントとは根本的に違う」
第一に、この認識の有無が問われています。違いを認識することなく思考と行動は変えようがないからです。
第二に、知識労働の生産性への取り組みには、先例がないということです。先例がないということは、試行錯誤的に知見を取り込みながら、前に進まなければならないことを意味しています。
お金を出して知恵の輪という難問をわざわざ購入するような行動が知識労働者の特徴です。先例のない問題や課題にワクワクしながら取り組む姿勢こそが、知識労働に求められている最も大切なものなのではないでしょうか。格段の想像力、勇気、リーダーシップの源泉は、そこにあるように思えます。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)