意思決定【経営のヒント 299】
今日は、『マネジメント』<中巻>第37章「意思決定」からです。
<ドラッカーの一言>
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間違った問題に対する正しい答えほど、
実りがないだけでなく害を与えるものはない。
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『マネジメント<中>』p.122 1973年 ダイヤモンド社
私たちは、拙速に正しい答えを求めがちです。
その弊害が「間違った問題」に飛びついてしまうことです。そこからもたらされる答えは、正しい答えなのでしょうか。スタートでつまずくととんでもない結論に行き着くことも稀ではありません。
スタートをしっかりする。そのためには目の前で起こっている現実に対する問題を見つめなければなりません。第一に必要な姿勢です。
第二に現実は一つではないという姿勢です。自分の主張が正しいなどと間違っても思わないことです。一人のひとが見ている現実は、起こっていることの一部です。違った意見には、違った現実が隠されている可能性があります。
したがって第三に多くの意見を聞くという姿勢が求められます。
意見は、見えていない現実をあぶりだす道具です。ドラッカー教授は、事実からスタートすることはできない、意見からスタートすべきだといいます。客観的な事実などないということです。それぞれの人がもつ価値観や欲求などにより、現実は変わるということです。それゆえ全会一致では意思決定するなと警鐘を鳴らします。
全員が見えていないものを脇において何かを決めようとしている可能性が高いからです。
何かを決めるとき、立ち止まりこのような姿勢や心構えを確認して、時間をかけて問題を明らかにし、次いで答えを求めることが大切です。
今回の国難に際しても同様です。今、真に問題になっていることは何か。
姿勢と心構えは同じです。拙速性は大きな決断の前には意味を失います。
急ぐあまり害を与える意思決定がなされないよう願うばかりです。
佐藤 等