明日の経営管理者【経営のヒント 94】
第5部「経営管理者であることの意味」の最後の章、「第29章は「明日の経営管理者」です。
エコノミストから転職する際、ドラッカーは、「わたしは人間の本質により関心があった。だから研究したいと思ったし、書きたいと思った」と述べているように、この章はその想いが溢れ出ています。
この著書が著された50年前に明日の経営管理者のあるべき姿に触れたのが次の一言です。
<ドラッカーの一言>
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
実に新しい課題は、明日の経営管理者に対し、哲学をもってあらゆる
行動と意思決定を行い、知識や能力、技能だけでなく、ビジョンや勇気や
責任や真摯さをもって人を導くことを要求する。
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
新訳『現代の経営』(ダイヤモンド社)より
ずいぶんとハードルの高い言葉が並んでいますが、企業の社会的責任などが問われている今こそここに立ち返る必要があるように思います。
「哲学」をもって行動と意思決定を行う・・・。「なぜ共通の価値観が必要なのか」、「なぜ動機づけが必要なのか」、「なぜ能力開発が必要なのか」など、経営資源としての働く人間に関する「哲学」をもつこと。これらの問いに経営者の皆さんはどのように答えますか?
紙面の関係でここには、書けませんが、すべて『現代の経営』に書かれています。
組織で働くものすべてに必要な「知識」、「能力」、「技能」だけでなく、経営管理者には、「ビジョン」、「勇気」、「責任」、「真摯さ」を求めています。
「ビジョン」:組織の目指すべき到達点を共有していること。
「勇気」:部下を鼓舞し迷うことなく到達点に導くこと。
「責任」:強みを引き出し、短期的にも長期的にも最大の効果をあげること。
「真摯さ」:仕事を越えて人間としての部下の将来に責任をもつこと。
真摯さについては、「あたかも親や教師のように部下に見返りを求めない心」と第92号でも述べました。上記は、私の言葉でまとめ直したものなので少々、舌足らずです。皆さんのご経験で補ってご理解下さい。
この章の最終節のタイトルは、「しかし中心となるものは真摯さ」となっています。ドラッカーの心の核心に触れる言葉だと思います。
さて609ページに及ぶ大著も残すところ終章のみとなりました。
さすがに長かった・・・。
佐藤 等