知識という生産手段【経営のヒント 763】
知識労働者を生産的な存在とするには資本財として扱わなければならない。
『経営の真髄』<上>p.340
これまでの投稿で「知識労働の生産性を向上させる方法を6つ挙げました。
①なされるべきことは何かを考えることである
②自らの仕事に責任を負わせることである
③継続してイノベーションに取り組ませることである
④継続して学ばせ、継続して人に教えさせることである
⑤知識労働の生産性は量よりも質の問題であることを理解させることである
⑥知識労働者は、組織にとってコストではなく資本財であることを自覚させることである
今回は⑥について考えてみたいと思います。この点についてドラッカー教授は、「経済学も現実のマネジメントも、肉体労働者をコストとして扱う。しかるに、知識労働者を生産的な存在とするには資本財として扱わなければならない」といいます。
コストは減らすことが望ましいですが、ものを生み出す源泉である人的資本財は価値を増やすことを考えなければなりません。つまり真逆です。
知識労働者は知識という生産手段を持っています。再生産力があり、知識は使っても減ることはありません。むしろ使えば使うほど生産的になるものです。
しかも持ち運び可能ゆえ流動的です。日本においても若者を中心に転職回数が増える傾向にあります。基本的な原因は、知識という生産手段を個人がもっているからです。これが知識社会化の本質です。
これを若者の特性などと誤認してはなりません。これまでは、工場などの場に経験が蓄積されていきました。工業化社会の特性です。そのような特性がなくなったわけではありませんが、特性がシフトしていることを見逃してはなりません。
知識という生産手段をもつ知識労働者をいかにマネジメントするか。知識労働そのものをどのようにマネジメントするか。現代の重要課題です。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)