人生を変えた七つの経験【経営のヒント 202】
今回もドラッカー博士の「人生を変えた七つの経験」からお伝えいたします。
三つ目の経験からです。
<ドラッカーの一言>
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やがて私は、一時に一つのことに集中して勉強するという
自分なりの方法を身につけた。
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『プロフェッショナルの条件』2000年 ダイヤモンド社より
三つ目の経験は、青年ドラッカーが二〇歳の頃のものです。
ハンブルクからフランクフルトに移った青年ドラッカーは、1929年に世界恐慌に遭遇します。
見習いとして働いていた証券会社は潰れましたが、その後フランクフルト最大の新聞社に記者として勤め始めます。担当は金融と外交。
第一次世界大戦により多くの働き盛りを失ったためチャンスが回ってきました。
二〇歳という若さで記事を書くことが出来たのです。とはいえ、経験の少ない身。
そこで青年ドラッカーは、決心します。
「有能な記者として知らなければならないことは、すべて知ろう」と。
一八歳のときの二つの経験を心に刻み、有能な記者となるべく勉強を始めました。
夕刊紙だったため朝6時から働き始め、14時15分には解放されたといいます。
その後の時間は、彼のものでした。
国際関係、国際法、歴史、金融などを学び始めました。
このときを契機にその後、六〇年以上ドラッカー教授は、学び続けます。
その方法を表現したのが今日の一言です。集中して学ぶ。
三ヶ月で学ぶものや、大きなテーマは二~三年かけて学んだといいます。
経済学や統計、日本画まで学びました。
これらは大学で講座を持つほどのレベルになりました。
六〇年以上集中して学ぶことで20~30テーマをモノにしていることになります。
その深さもさることながら、テーマの多さに驚かされます。
渡部昇一氏の著書に『発想法』がありますが、そこに書かれていることの一つに「発想の井戸を掘る」という箇所があります。
複数の井戸を持つと、一生尽きることのない豊かな水量を得られる旨の記述があります。
まさにドラッカー教授は、複数の井戸を掘り、書き続けた巨人でした。
私たちも集中して学ぶことで、二つ以上の深い井戸を持ち、独自性を生み出しながら成長を続けたいものです。
佐藤 等